「母を15年ずっと介護してきたのに…」妹との“遺産争い”に悩む長女に不動産業者と弁護士がタッグを組んだ結果 (※写真はイメージです/PIXTA)

不動産業者がせっかく優良な不動産物件を扱えても、その物件にまつわる複雑な法律トラブルがあると、物件が適正価格で売れず、依頼者の希望に添えないことがあります。そこで、せっかくのビジネスチャンスを失わないため有効なのが、法律の専門家である弁護士との「協業」です。そこで、弁護士として不動産関係の数々の法律問題を解決してきた実績をもつ鈴木洋平氏が、不動産業者と弁護士の協業について事例を交え解説します。

【事例1】複数の相続人を単独にして納税額を「ゼロ」に

【登場人物】

  • Aさん:母
  • Bさん:長女(結婚して独立)
  • Cさん:二女(母と同居)

 

この事例における3名の関係
【図表1】事例1における3名の関係

 

Aさんが亡くなり相続が開始しました。Aさんの夫はすでに亡くなっているため、相続人はBさんとCさんだけです。遺産は、AさんとCさんが住んでいた自宅不動産しかありません。

 

BさんとCさんは話し合い、揉めたくないので自宅を売ってそこで得たお金を折半しようということになりました。そこで、近所の不動産業者に相談することにしました。

 

相談を受けた不動産業者は、相続税のことで悩んでしまいました。なぜなら、その不動産はB・Cさんの祖父が取得したもので取得価格が分からないからです。

 

このような場合では、売却価格におおむね20%の課税がされます。自宅不動産は3000万円で売れそうなので、600万円ほどの納税が必要になるようです。この話を姉妹にすると、なんとか節税してほしいとお願いされてしまったのです。

 

困ってしまった不動産業者は、「とにかくなんとかしてくれるだろう」という感覚で懇意にしている弁護士に相談しました。

 

弁護士は、「節税できる制度があるはず」と直感しましたが、税金関係は専門外です。

 

そのため、普段から協業をしている税理士に確認しました。すると税理士は、居住用の不動産を売却した場合は売却益3000万円までは課税されない特例があること(居住用財産の特別控除)、同居中の人が土地を相続した場合は相続税の節税ができること(小規模宅地等の特例)、両方とも申告をしなければ適用されないことを説明してくれました。

 

そこで、弁護士は次の提案をしました。自宅不動産についてはCさんのみが取得すること、そして仲介手数料などの売却諸経費を控除した売却益を算出し、その半額に相当する金員をBさんに支払うという遺産分割協議をすることです。これを「代償分割」といい、支払うお金のことを「代償金」と呼びます。

 

今回の事例の場合は、そもそも売却益が3000万円以下なので、居住用財産の特別控除のみを申告することで相続税の納税額をゼロにすることができました。

 

また、結局自宅不動産もしばらくあとに売却することとなりましたが、Cさんのみが相続していたため、不動産業者としては業務が簡便になりました。

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    LTRコンサルティングパートナーズ 理事

    慶應義塾大学卒業後、2004年に弁護士登録。複数の行政機関で成年後見制度に関する委員、建築審査会委員、横浜家庭裁判所家事調停官(非常勤裁判官)など歴任したうえで、現在は住宅品質確保法の紛争処理委員、建設工事紛争審査会委員、横浜地方裁判所等民事調停委員。
    「不動産」が関係する法律問題のほか「高齢者」であることに起因する法律問題を重点的に取り扱っている。不動産関係の顧問先は50社以上、相談件数は年間200件を超える。
    11の士業が集まるLTRコンサルティングパートナーズの理事として、税理士、司法書士、土地家屋調査士、一級建築士との連携が必須となる複雑な不動産案件の解決実績も多数。

    著者紹介

    連載不動産業者のための 弁護士との「協業」のすすめ

    不動産業者のための 弁護士との「協業」のすすめ

    不動産業者のための 弁護士との「協業」のすすめ

    鈴木 洋平

    幻冬舎

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