【事例7】横暴な地主に対し「建物の買取り」を請求
【登場人物】
- Aさん:建物の所有者で土地を借りている
- Bさん:地主
AさんはBさんから土地を借り、自宅を建てて20年間居住していました。しかし、高齢になったことから施設に入所しようとBさんに借地権の買取りを依頼しました。
ところがBさんからは、「使わないなら建物を壊して更地で返すように」と拒まれてしまいました。
Aさんは、借地権を買い取ってもらえないと施設への入所費用を捻出できません。そこでAさんは、昔から付き合いのある不動産業者へ相談しました。すると、「建物は築20年で価値は乏しいが、自分が住んでもいいので50万円なら引き取る」と提案されました。Aさんはその金額でも構わないと思い、さっそく、売買契約書を作ってもらうことにしました。
ところが、Bさんは不動産業者へ借地権を譲渡することも承諾してくれません。これでは不動産業者もお手上げなので、弁護士へ相談することにしました。
しかしながら、借地権の譲渡が信頼関係の破壊に当たるといえない特別な事情があるときは、例外的に借地契約の解除ができないという最高裁の判例があります。
また、仮にそのような特別な事情がないとしても、建物を譲り受けた人は地主に建物を買い取ることを請求できます(建物買取請求権といいます)。
今回はBさんが更地返還を頑なに求めていること(Aさんに建物の解体費用を負担する余裕はないので無理)、不動産業者の属性(資力が十分であることなど)に問題がなく利用形態も変わらないことなどの事情があり、信頼関係の破壊があるといえない(解除できない)と判断される可能性もそれなりにあると思われます。
また、仮に信頼関係の破壊がある(解除できる)とされても、不動産業者は建物の買取りを請求できます。つまり、Aさんは建物解体(更地返還)費用を免れ、不動産業者は建物の売却金を手に入れることになります。
弁護士はそのことをAさんと不動産業者へ丁寧に説明し、両者はBさんの承認を得られない状態で借地権の譲渡契約を結ぶことにしました。
その結果として借地契約は解除できると裁判所に判断されたものの、その後不動産業者はBさんに建物の買取りを請求して数百万円を得ることができました。
なおこの買取価格は、一般的に土地を占有していることの場所的利益として土地価格の1~2割程度、さらにプラスで建物価格としてたとえ市場価値がゼロ査定であっても最低50万円程度の値が付くことが多いです。