不動産業者と弁護士の「協業」が互いの顧客利益を最大化する (※写真はイメージです/PIXTA)

不動産業者がいかに優良な不動産物件を扱えても、その物件にまつわる複雑な法律トラブルがあると、物件が適正価格で売れず、依頼者の希望に添えないことがあります。そこで、せっかくのビジネスチャンスを失わないため有効なのが、法律の専門家である弁護士との「協業」です。そこで、弁護士として不動産関係の数々の法律問題を解決してきた実績をもつ鈴木洋平氏が、不動産業者と弁護士の協業について事例を交え解説します。

協業を成功させるうえで不可欠な5つのポイント

不動産業者は、弁護士と協業することで仕事の幅が広がり、利益を増加させることができます。これと顧客の利益は比例関係にありますから、結果的に「三方良し」となります。

 

ただし、やみくもに弁護士と組むのは良くありません。私は今までの経験から協業を成功させるには、お互いに次の5つのポイントを理解しておくことが重要だと考えています。

 

ポイント1| 「餅は餅屋」であることを意識する

不動産業者にとって法律は専門ではありませんし、弁護士にとって不動産は専門ではありません。やはり「餅は餅屋」です。専門家の経験や知識に対するリスペクトを意識しないとトラブルの基となります。

 

不動産業者のなかには、経験の浅い弁護士よりも法律に関する知識や経験が豊富な人もいます。このような場合、弁護士に対して法律的な提案を押し付けてくるケースもありますが、それで良い関係を築けるとは思えません。あくまで経験談を語る程度にとどめておくべきです。

 

また、まれにですが弁護士を通さず直接顧客に「この方法で裁判をしたら勝てますよ」といった提案をするケースがあります。しかし、このような行為は厳禁です。

 

その言葉がきっかけで訴訟を起こして負けても不動産業者は責任を負えません。そもそも弁護士資格をもたない人が、報酬を得る目的で訴訟の手伝いをすると弁護士法72条違反になる可能性があります。

 

一方で弁護士のなかにも、「この不動産の価格はこんなに安くないはずだ」「残置物処理費用をもっと安くできる業者を知っている」などと不動産に関する意見を押し付けてくる人がいます。

 

しかし、不動産業者が専門的な知見をもって出した回答について弁護士が意見することは良い結果を生みません。仮に価格についてであれば、裁判で価格の不当性が論点になった判例など法曹関係者ならではの見方を説明するにとどめるべきです。

 

ただし、お互いの専門領域に関する見解は臆せず意見を交わすことは重要です。要するに各自の分野の役割を果たすことが協業の大前提なのです。

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    LTRコンサルティングパートナーズ 理事

    慶應義塾大学卒業後、2004年に弁護士登録。複数の行政機関で成年後見制度に関する委員、建築審査会委員、横浜家庭裁判所家事調停官(非常勤裁判官)など歴任したうえで、現在は住宅品質確保法の紛争処理委員、建設工事紛争審査会委員、横浜地方裁判所等民事調停委員。
    「不動産」が関係する法律問題のほか「高齢者」であることに起因する法律問題を重点的に取り扱っている。不動産関係の顧問先は50社以上、相談件数は年間200件を超える。
    11の士業が集まるLTRコンサルティングパートナーズの理事として、税理士、司法書士、土地家屋調査士、一級建築士との連携が必須となる複雑な不動産案件の解決実績も多数。

    著者紹介

    連載不動産業者のための 弁護士との「協業」のすすめ

    不動産業者のための 弁護士との「協業」のすすめ

    不動産業者のための 弁護士との「協業」のすすめ

    鈴木 洋平

    幻冬舎

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