近年、国内外でたびたび報道されているセクハラ問題。一般企業にとっても、セクハラの発生は由々しき問題であり、経営者や管理職は日々神経をとがらせています。ここでは、セクハラの定義と具体的な留意点について、企業法務を多く取り扱う、山村法律事務所の寺田健郎弁護士が解説します。

「これはセクハラになりますか?」…急増するセクハラ相談

中小企業法務を多く取り扱っている筆者の事務所では、さまざまな労働問題に関する相談を受けています。近年では、そのなかでもとくに「ハラスメント」に関する相談が多く、需要の高まりを感じています。

 

このようなハラスメントでお悩みの管理職・経営者の方々に、気を付けるべきポイントとは、どのようなものでしょうか。

 

今回は、『セクハラを起こさない』という視点から、

 

●セクシャルハラスメントの「種類」と「例」

●管理職・上司としてとるべき対策

●「セクハラ上司」にならないために気を付けるべきポイント

 

についてみていきます。

セクシャルハラスメントには、大きく分けて2種類ある

セクハラには大きく分けて「対価型セクハラ」「環境型セクハラ」の2種類があります。

 

◆対価型セクハラ

「対価型セクハラ」は、職場において、労働者の意に反する性的な言動がおこなわれ、それに対して拒否・抵抗等をしたことによって、労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けることとされています。

 

「対価型セクハラ」についてのポイントは、下記の3つです。

 

①性的な言動

②拒否・抵抗

③不利益を受ける

 

具体例としては、経営者に労働者が性的な関係を要求され、それを断ったところ解雇されてしまった、というケースや、出張中の車内で上司の立場を利用し、労働者の体を触られたので抵抗したところ、労働者が不利益な配置転換をさせられたケース、事業主の普段からの性的な言動について、抗議したところ降格させられた、減給させられたというケースなども対価型セクハラの典型的な例として挙げられます。

 

◆環境型セクハラ

もうひとつの「環境型セクハラ」は、職場においておこなわれる労働者の意に反する性的な言動により、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、労働者が就業する上で見過ごすことができない程度の支障が生じること、とされています。

 

「環境型セクハラ」についてのポイントは、下記の3つです。

 

①性的な言動

②不快な就業環境への変化

③支障の発生

 

「対価型セクハラ」のように、労働者側が、解雇や配置転換、減給といった直接的な不利益を受けることがないという時点で、この「環境型セクハラ」は少々わかりづらく、気づかずにおこなっている方も多いのが特徴です。

 

具体例として、上司が労働者の体をたびたび触り、労働者が苦痛に感じて就業意欲が低下したケース、取引先の労働者に対して性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したことで、労働者が苦痛に感じ、仕事が手につかなくなってしまった、というケース等が挙げられます。

 

一昔前は「職場にセクシーなポスターを貼っていたら、環境型セクハラだといわれた」といったことがありましたが、現在ではそういった状況は考えにくいでしょう。

 

ポスターのような例ではなく、現在では、性的な言動が繰り返されることによって就業意識が低下してしまうような環境が続くといったケースが、環境型セクハラとして認められる傾向にあります。

 

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