スタッフ自身に「気づかせる」ことの重要性
私から「こうしてください」と指示するのは簡単ですが、言われたからやるだけでは意味がありません。でも、自分で気づいて「こうしてみよう」と思ったのなら前向きに取り組めるし、成果が上がったときに自信も深まります。だから、私からは根気よく「気づかせるための材料」を提供し続けています。
反対に、気になることがあった場合は個別に対応します。ミスやトラブルの中には、正直に言えばあきれるようなものもあります。でも、わざとミスをする人はいない! 本人の考えを聞いてみると、「なるほど、そう思ったのね」と思わず納得することも多いのです。
大切なのは同じミスをくり返さないことと、何が問題だったのか、きちんと納得してもらうこと。そのためにも、スタッフ側の話も聞いたうえで、次につながるアドバイスをすることを心がけています。
スタッフ教育の基本は自分で考えさせること
店を「よい場所」にするのは、そこで働く人です。どんなにおいしい料理を提供しても、それだけでは居心地のよさは生まれません。だから若いスタッフにも、「この仕事をしていてよかった!」と心から感じるような体験をしてほしいと思っています。
私のこれからの仕事は、スタッフのやりがいを大きくしていく方法を考えること。
そのための取り組みのひとつが、自分の強みや個性を毎日の仕事にどう生かせるかをスタッフ自身に考えさせることです。
どんな情報を提供していけばいいのか、どんなフィードバックが有効か。試行錯誤しながら続けていこうと思います。チームは人の集まり。ひとりひとりがやりがいを感じることが、チームの力を底上げしてくれると信じています。
「軸」となる価値観はチーム全員で共有したい
私たちの会社には、「こういう場面ではこうする」などと定めた「接客マニュアル」はありません。そのかわり、サービススタッフの採用面接の際、必ず「接客の11の心得」を見せ、1項目ずつ説明することにしています。
「接客の11の心得」は、スタッフの振舞いの基本をまとめたものですが、すべてについて「なぜそうするのか」という理由が添えてあります。
伝えたいのは「この場面ではこうする」という単純なルールではなく、行動のベースとなる考え方だからです。
会社は、さまざまな人が集まって一緒に働く場。細かいルールで画一化するのではなく、ひとりひとりが個性や強みを生かせるのが理想です。会社の価値観をきちんと共有しておくことで、「会社としての基本」に「その人らしさ」を上乗せしたサービスが可能になるのではないかと考えています。