加速するDX…変化するためにこそ絶対に変えてはならない「仕事の本質」とは

加速するDX…変化するためにこそ絶対に変えてはならない「仕事の本質」とは
(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載では、人気YouTubeチャンネル「魚屋の森さん」の運営者で、IT企業から実家の魚屋の後継者へと転身し、新しい視点でSNSをビジネスに効果的に活用している森朝奈氏が、著書『共感ベース思考 IT企業をやめて魚屋さんになった私の商いの心得』から、経営における「共感ベース」の仕事術や発想法について解説します。

「軸」となる会社の理念を社員に周知する意義

各店舗では、YouTubeで配信している『魚屋の森さん』の映像を流しています。お客さまに魚や私たちの会社のことを知ってもらうことがおもなねらいですが、そこで働くスタッフに見てもらいたいとも思っています。

 

もともとはYouTube視聴者向けに配信しているものですが、実は言葉の端々に会社の理念や自分の思いなどを盛り込んでいます。営業中ずっと映像を流していれば、会社からのメッセージが頭に刷り込まれていくはず! 記憶に残らなくても潜在意識に影響を与える「サブリミナル効果」のように、見たり聞いたりしたつもりはないのに、私たちの会社の哲学が身についている……なんてことにならないかなあ、と少し無理のある期待もしています。

 

また、スタッフ用に会社の成り立ちを紹介する動画も制作しています。会社が生まれ、成長してきたストーリーを知ることで、「接客の11の心得」をはじめとする会社の姿勢への理解が深まると思ったからです。ただ「こうしましょう」と言われても、ピンと来ないことも多いはず。具体的なエピソードを見せることで、「なぜそうするのか」という背景を伝えられたらと思っています。

 

絶対にかえない軸があるから大胆な変化も可能になる

私たちの会社の価値観やストーリーにこだわるのは、会社の「軸」となる価値観をチーム全体で共有したいからです。会社は成長とともに変化してきたし、これからもかわっていきます。でも軸がどこにあるかを見失わなければ、どんな形にかわっても倒れることはありません。見方をかえれば、しっかりした軸があるから大胆に変化することもできるのです。

 

変化が必然なのは、後継者である私に、父と同じことができないからです。父がしてきたことを私にもできる形にかえなければ事業の承継はできません。それに加えて、時代の変化に対応していく必要もあります。

 

会社を「守る」とは、「何もかえない」ことではありません。社会の仕組みも人の価値観も、どんどんかわっていきます。その中でかわらずにいることには、周りからとり残されてしまうリスクもあるのです。設立から40数年の間に、会社の事業の主軸が鮮魚販売から飲食事業へとかわったように、会社を守るためには、これからも変化し続ける必要があると思っています。

 

仕事のしかたをかえても会社の軸は守り抜く

私がシステム導入を提案したときには、社内から強い反発がありました。多くのスタッフに「これまでの仕事をかえたくない」という思いがあったからです。

 

使う道具がFAXからパソコンになったからといって、仕事の本質までかわるわけではありません。また私の提案は、「かえたい」からではなく、会社を守るために「かえなければならない」という思いからのもの。でもスタッフには、そのことをなかなか理解してもらえませんでした。会社に対する思い入れの深いベテラン社員には、私がこれまでの仕事を否定し、別の形につくりかえようとしているように見えたのでしょう。

 

だから、決して「かえない部分」があること、それが何かということを全員で共有したいのです。これからも、私たちは変化していくでしょう。でも、かえるのはやり方だけ。会社の「軸」は、ずっと守り続けます。

 

 

森 朝奈

株式会社寿商店

常務取締役

 

共感ベース思考 IT企業をやめて魚屋さんになった私の商いの心得

共感ベース思考 IT企業をやめて魚屋さんになった私の商いの心得

森 朝奈

KADOKAWA

SNSでストーリーと信頼をシェア。「共感」からすべてが始まる! 代々鮮魚卸を営む一家に育った著者。女性が極端に少ない魚業界へ家業の2代目として飛び込み、YouTubeやSNSで「思い」をシェア。「魚好き」とつながりながら、…

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