(※写真はイメージです/PIXTA)

非行少年の保護者には、親としての責任感に欠けた人々がいる一方で、子どものために一生懸命やってきたという人も少なくありません。出口保行氏の著書『犯罪心理学者が教える 子どもを呪う言葉・救う言葉』(SBクリエイティブ)より、親の「よかれと思って」が子どもの非行・犯罪につながる理由を見ていきましょう。

親が陥りがちな「確証バイアス」

そもそも親は「確証バイアス」によって、子育ての方針を修正するのが難しくなります。「確証バイアス」とは心理学の用語で、自分に都合のいい情報ばかりを無意識に集めてしまうことを言います。自分が正しいと思うことを支持する情報に目が行き、否定するような情報は無視する。その結果、思い込みが強固になり、かたよった判断をするようになるというものです。

 

これは子育ての方針に限らず、あらゆる情報について起こることです。普通にしていると誰もが陥りやすいものですから、バランスのとれた考え方をするためには、意識して自分とは別の考え方を知る努力が必要になります。

 

ただ、子育てに関してはとくに確証バイアスが働きがちになります。子育てや家族の中のことは、まわりが口出ししにくいからです。

 

「お子さんの話をもうちょっと聞いてあげたらいいんじゃない?」などと周囲の人が思ったとしても、口に出せば「余計なお世話」と言われるでしょう。「うちにはうちの方針があるから」と言われたら、何も言えません。虐待などよほどのことがない限り、外からの介入が難しいのです。虐待にしても、「これはしつけだ」と言い張られたら、簡単に介入できるものでもありません。

 

こうして、家族というある意味閉鎖的な空間の中で「うちの子にはこれがいい」と確信を持ってしまうと、他の情報が入ってこなくなります。

 

すると、どうなるか。子どもの発するSOSにも気づかなくなります。

 

子どもは、「もっと自分を見てほしい」「認めてほしい」というときもそれをストレートに伝えることはなかなかできません。ちょっとした口答えや、やるべきことをやらなくなるなど、小さな変化で表現します。SOSはわかりにくいものなのです。確証バイアスが機能すると、こういった変化の意味を理解することなく、そのまま突っ走ってしまいます。そして、何かのきっかけで子どもは不満を爆発させます。

 

親の「よかれと思って」が非行・犯罪まで行き着くことになるのです。

 

もちろん、いまの子育て方針でうまくいくこともあるでしょう。問題ないのであればいいのです。ただ、確証バイアスが働きやすいことは知っておいてほしいと思います。

次ページ子育ての確証バイアスから抜け出すには?

※本連載は、出口保行氏の著書『犯罪心理学者が教える 子どもを呪う言葉・救う言葉』(SBクリエイティブ)より一部を抜粋・再編集したものです。

犯罪心理学者が教える 子どもを呪う言葉・救う言葉

犯罪心理学者が教える 子どもを呪う言葉・救う言葉

出口 保行

SBクリエイティブ

その「一言」が、子どもを非行・犯罪へと向かわせる――。 親のよかれが危険な声かけになっていないか検証し、学力・人間力ともに優れ自律した子どもを育てる方法とは? 子育てに悩むすべての親を救う、人気教授の決定版…

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