設備投資(除くソフトウェア)前年同期比+8.0%、4.5ポイント増加率高まる
設備投資等上方修正、実質GDP第2次速報値前期比年率▲0.9%予測
22年7~9月期の法人企業統計調査の全産業(金融業・保険業を除くベース)の設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の前年同期比は+8.0%と、4~6月期の前年同期比+3.5%から4.5ポイント伸び率が高まり、6四半期連続の増加になった。4~6月期で前年同期比+11.9%の増加だった製造業は、7~9月期では同+6.6%へと5.3ポイント増加率が鈍化した。非製造業は4~6月期で前年同期比▲0.9%の減少だったが、7~9月期では同+8.8%の増加と9.7ポイント伸び率が改善した。
7~9月期・全産業(金融業・保険業を除くベース)設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の季節調整済み前期比は+2.7%と4四半期連続の増加になった。製造業は▲2.0%と7四半期ぶりの減少になった。一方、非製造業は+5.5%と2四半期連続の増加になった。
なお、法人企業統計(ソフトウェア投資額を含むベース)の季節調整済み前期比は7~9月期+2.4%と2四半期連続の増加になった。製造業は▲2.3%と7四半期ぶりの減少、非製造業は+5.1%と2四半期連続の増加になった。
法人企業統計(ソフトウェア投資額を含むベース)で7~9月期の全産業の前年同期比は+9.8%で4~6月期の+4.6%と比べ5.2ポイント伸び率が改善した。資本金別の内訳をみるとまちまちで、資本金10億円以上の大企業では前年同期比は+1.7%の増加と、4~6月期の+1.2%の増加から0.5ポイントと若干改善した。資本金1億円以上10億円未満の前年同期比は+15.3%の増加と、4~6月期の+33.1%の増加から17.8ポイント鈍化した。一方、資本金1,000万円以上1億円未満の中小企業の前年同期比は+22.9%の増加と、4~6月期の前年同期比▲5.7%の減少からは28.6ポイントと大幅に改善した。
供給サイドのデータに基づいて算出した7~9月期GDP第1次速報値では、名目の前年同期比は+8.6%と6四半期連続の増加になった。4~6月期の+4.4%の増加から4.2ポイントと改善した。一方、法人企業統計では全産業(金融業・保険業を除くベース)の設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の前年同期比は4~6月期から7~9月期にかけ4.5ポイント改善した。両者の変化幅は法人企業統計の方が0.3ポイント高い。
7~9月期GDP第1次速報値で、供給サイドのデータに基づいて算出した、7~9月期の名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は+12.9%、また供給側推計値の情報を用いた需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比は+14.2%であると公表されているが、7~9月期法人企業統計調査・全産業(金融業・保険業を除くベース)の設備投資(ソフトウェア投資額を除くベース)の原数値ベースの前期比は+15.1%となり、仮置き値より0.9ポイント大きい増加率になった。
7~9月期GDP第2次速報値の設備投資は前期比+1.8%程度と、第1次速報値の同+1.5%から上方修正されるとみた。
民間在庫変動
22年7~9月期のGDP第1次速報値の名目民間在庫変動・原数値は4,618億円で21年7~9月期の1,822億円からは2,796億円の増加であった。22年7~9月期GDP第1次速報値では民間在庫変動・名目原数値・前年同期比寄与度は+0.2%であった。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえないが、4項目中プラス寄与は3項目で、大きな方から製品在庫、流通在庫、仕掛品在庫の順になっている。原材料在庫だけがマイナス寄与であるということだ。しかし、22年7~9月期の法人企業統計では、原材料・貯蔵品在庫が前年同期比増加になっている。このため、GDP第2次速報値の名目民間在庫変動は、原材料在庫がマイナス寄与からプラス寄与に転じる分、上方修正されるとみた。
22年7~9月期GDP・第2次速報値予測
12月8日に発表される22年7~9月期第2次速報値では、本日の法人企業統計の発表を受けて、設備投資、民間在庫変動、公共投資などを中心に改定される。
22年7~9月期第2次速報値では、実質設備投資は前期比+1.8%程度と、第1次速報値の同+1.5%から上方修正になると予測した。一方、実質民間在庫変動・季節調整値・前期比寄与度は若干上方修正されるが、表面的な数字は▲0.1%程度と、第1次速報値の▲0.1%から変わらないとみた。
また、公共工事出来高の前年比は7~8月分平均が▲1.7%だったが、7~9月期の前年同期比は▲0.6%と減少率が縮小した。このことからみて第2次速報値での実質公共投資の前期比は第1次速報値の+1.2%から+2.0%程度に上方修正されると予測する。
22年7~9月期GDP第2次速報値で、実質GDPは前期比▲0.2%、前期比年率▲0.9%と予測する。第1次速報値の前期比▲0.3%、前期比年率▲1.2%から上方修正となろう。設備投資、民間在庫変動、公共投資は各々上方修正要因になるとみた。なお、7~9月期第2次速報値は毎年、過去の数字が改定される時期に当たり、その影響により、予測値がぶれやすい点に留意が必要だ。
(2022年12月1日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年7~9月期法人企業統計・設備投資などについて』を参照)。
宅森 昭吉
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
理事・チーフエコノミスト