(※写真はイメージです/PIXTA)

自信をはぐくむとは、鏡のような働きをする会話によって、子どもが自己をより正確にとらえられるようにすること、そして、「自分で状況をコントロールしている」と感じられるようにすることです。レベッカ・ローランド氏の著書『自分でできる子に育つ 最高の言葉かけ』(SBクリエイティブ、木村千里訳)より、自信と自立性をはぐくむ会話を紹介します。

自信を築く重要な基礎、「実行機能」を伸ばすには

この「段階的な進歩」という考え方で思い出したのが、イギリスのバーミンガム大学の心理学者ローリー・ディバインと交わした会話です。ディバインは、子どもの実行機能の伸ばし方を研究しています。実行機能は、課題を切り替える能力、複数課題を処理する能力、計画能力から成り、自信を築く重要な基礎となります。ディバインの発見によると、実行機能を伸ばすのに特に効果的なのが、流動的な会話です。大人は子どもに常に柔軟に接し、手伝ったり援助したりしたら、すぐに身を引くのです。

 

「子どもが困っているときはしっかり助け、助けが必要なくなったら手を引く。きちんとメリハリをつけ、すぐに手を出さないようにしましょう」とディバインは提案しています。自信をはぐくむ会話を、潮の満ち引きのようなものだと考えてみてください。子どもが行き詰まったときは介入し、難局を乗り越えたら退却します。温かな理解ある口調で話し、困難を恐れる必要はないと気づかせてやりましょう。

 

例として、4歳の息子がピーナッツバター・アンド・ジェリーサンドイッチを作ろうとしています。材料をすべてテーブルに出したかと思うと固まって、どうしたらいいかわからない、と言いました。最初はあなたが教えてもかまいません。ビンを開けて、お皿のパンに塗って、と順を追って説明していきますが、息子がその先を思いついた時点で、口を閉じましょう。手助けは必要最小限にし、後ろに下がるのです。

 

会話を始めるときは、「どうすればいいか、わかっているよね」というスタンスで臨みましょう。たとえわかっていなくても、「私がどうやってたか思い出せる?」「さあ、次はどうしたらいいと思う?」といった質問で助け舟を出しましょう。子どもに「自らの行動を統制している感覚(=コントロール感)」を与えてやれます。子どもに有能感とコントロール感を与えたければ、発言を子どもに合わせることです。

粘り強さを育てるにも「コントロール感」が大事

サンドイッチの例からもわかるとおり、困難を恐れない子どもに育てるには、いかにコントロール感をはぐくむかが大事になってきます。「統制の所在(locus of control)」が内的な子ども、つまり状況の原因を自分の中に見出す子どもは、「状況は自分次第で変えられる」と信じています。進歩の鍵を――少なくともその一端を――握るのは自分自身です。他者や運に頼る必要はありません。うんていの途中で落ちたら、一歩引いて、策を練り、再挑戦できます。長年の研究から明らかなように、このような内的統制型の子どもほど、粘り強く、個人的な成功を実現していきます。「変化を起こす力は自分自身にある」と考え、「どうにもならない」とは考えません。

 

「うまくいかなかったのは自分のせい、うまくいったのは運のおかげ」と説明する子どもは、逆の考え方をする子どもに比べ、落ち込みやすく、目標も達成できない傾向があります。落ち込みやすい傾向は後年も変わりません。ネガティブなセルフトークによって徐々に自信がむしばまれ、結果として行動や他者からの扱われ方までもが変わってきます。

 

逆にポジティブなセルフトークをする子どもは、他者から大事に扱われることを期待します。すると、たいてい大事に扱われます。親なら誰しも後者のパターンを望むものです。

 

ここで朗報です。上質な会話によって、「自分でコントロールできることは思っている以上に多い」ということを示せば、統制の所在の範囲は拡大できます。具体的には、「目標を定め、そこにたどり着くためのステップを決め、うまくいかなければ振り返って新しい手を考える」権限を子どもにゆだねるのです。これは子どもが無力感を覚え始めたとき、たとえば、「ぼくにはどうしようもない」という言葉が出始めたときに、特に重要です。「次はどんなステップが取れる?」のような、より楽観的なスタンスで問いを立てられるからです。様々なことを子ども自身にコントロールさせてあげれば、できることが増え、もっと建設的に失敗を振り返れるようになります。

 

たとえば、ティーンエイジャーの息子が、レスリングの試合で思ったほど良い成績を出せなかったとします。なぜでしょうか? 実力が劣っていたのかもしれないし、年齢区分が上がったせいかもしれません。この点については、息子にはどうしようもありません。

 

しかし、食事や睡眠の質は万全だったでしょうか? 効果的なトレーニングができていたでしょうか? 負けが込んできたとき、自分にどんな言葉をかけたでしょうか?

 

こうした要因(特にセルフトーク)に目を向け、振り返ることが変化を起こす第一歩です。好奇心と思いやりにあふれる姿勢で話すことで、あなたは改善点の特定と、改善方法の検討を支援できます。できる限り、未来に焦点を当てた前向きな話し方を心がけましょう。どこをどう変えられそうか尋ねてください。やがて子どもは自力で解決策を考えるようになり、自信を持って意思決定できるようになります。

 

 

レベッカ・ローランド

音声言語病理学者。ハーバード大学教育大学院講師、ハーバード大学医学大学院教員、ボストン小児病院神経内科に所属する言語療法の専門家。

言語聴覚士の国家資格を有し、幼児から高校生までの子どもを対象に、教育現場でカウンセリングや学習補助をしている。発話言語や読み書き障害、および子どものコミュニケーション能力の発達について研究し、教師の専門性向上に取り組んできたほか、アメリカの新聞や雑誌などさまざまな媒体で教育や子育てに関する記事を寄稿している。

※本連載は、レベッカ・ローランド氏の著書『ハーバード大学教育学博士×発達支援専門の言語学者が教える 自分でできる子に育つ 最高の言葉かけ』(SBクリエイティブ)より一部を抜粋し、再編集したものです。

ハーバード大学教育学博士×発達支援専門の言語学者が教える 自分でできる子に育つ 最高の言葉かけ

ハーバード大学教育学博士×発達支援専門の言語学者が教える 自分でできる子に育つ 最高の言葉かけ

レベッカ・ローランド 著
木村 千里 訳

SBクリエイティブ

【子どもの教育は「会話」がすべて! 時間もお金もいらない、科学的な子育てメソッド】 子育てをするには、あまりにも時間が足りない。子どもにしっかり向き合いたくても、仕事や家事に追われ、十分な時間が取れない。そん…

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