(※写真はイメージです/PIXTA)

ネット上に悪質な書き込みをされた場合、サイト管理者に対し情報開示請求をおこなうことによって、投稿者を特定できます。では投稿した端末が個人のものではなく会社の端末だとしても、特定は可能なのでしょうか。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、投稿者特定について江頭啓介弁護士に解説していただきました。

 

「公開される情報」という意味を考えてほしい

SNSを含めたネットツールはとても便利になりましたね。画像や動画の配信、ツイート、ネットショッピング、オンラインゲームなど、昔では難しかったことも今ではとても簡単にできるようになりました。

 

一方で、ネットユーザー間のトラブルも増加しましたが、昨今ではネットにおけるマナーが強く意識されるようになり、誹謗中傷にならないよう注意する方が増えてきております。もしかしたら、開示請求の存在が誹謗中傷の抑止力として機能している一面もあるかもしれません。

 

ただ、悲しいことに、ネット上の誹謗中傷を「論戦」という形で美化する風潮はまだまだ残っており、時には有名人同士のネット上での口喧嘩(論戦)がニュースで取り上げられるなど、異常な社会現象となっています。

 

彼らの「論戦」は対抗言論という説明で片付けられるものかもしれないですが、明らかに相手の名誉を傷つけているであろう発言も多くあります。

 

そのように大人達が本気で罵り合っている姿がネットで平然と公開されている日本社会は、まさに異常であると感じます。

 

ネット上で誹謗中傷されることにおいて、もっとも問題なのが「公開」という状況です。悪口が「公開」されているから被害者が悔しい思いをし、「公開」されているから名誉が傷つくのです。

 

また、「公開」された誹謗中傷は次の誹謗中傷を呼び、対抗言論は集団的に揚げ足を取られるために追い付かなくなり、その状況は集団が「論破した」と満足するまで続けられてしまいます。

 

ただ、私がネット問題に取り組むようになって厄介だなと感じていることは、「投稿している加害者側に罪の意識が薄い」という点です。

 

この点は上記で述べた「論戦」の悪影響があるかもしれませんが、皆さん「軽い気持ちで書き込んだ」「こんな大事になるとは思ってなかった」という方が本当に多いです。この現象に原因があるとすれば、やはりネット上での相手の表情が分かりにくい点かと思います。

 

対面であれば、相手の「怒り」「悲しみ」などがダイレクトに読み取れ、自らの言動に責任を感じることができますが、ネット上では主に文章でケンカをするので、相手の反応を想像するしかありません。

 

投稿する時に想像するのは「相手が誤りを認めている姿」「相手が平謝りしている姿」「論破されて恥ずかしがっている姿」など投稿者に都合の良いものかもしれません。

 

しかし、実際に「開示請求をする」「うつ病になった」など予想しない反応が返ってきた際に初めて自らの責任を感じることができるのです。

 

ネットが「公開」された環境であるからこそ、その影響力は大変大きいものです。投稿一つでも数万数十万人のリアルに影響を与え得るツールですが、そのユーザーは全員生身の人だということを再確認したいです。

 

些細な投稿であっても「あっ、自分がこれ言われたら嫌だ、恥ずかしい」「これは面と向かって言えないな」と気づけたのなら、ネットとの付き合い方も少し違ったものになるはずです。

 

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