(※写真はイメージです/PIXTA)

会社で問題行動を起こす「モンスター社員」に頭を悩ませている経営者は少なくありません。一度雇用した従業員を解雇することは簡単ではなく、正当な手順を踏まなければ不当解雇として相手側から訴えられてしまうリスクもあります。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、問題社員の解雇について柏真人弁護士に解説していただきました。

 

普段から解雇に備えた対策をしておきましょう

日本では、いわゆる解雇権濫用法理により、一度雇用した従業員を解雇することはリスクを伴います。

 

一番のリスクは、不当解雇として訴訟を起こされ、敗訴して、解雇が無効となり、多額の金銭の支払いを命じられたあげく、当該社員の職場復帰まで命じられる…というものでしょう。

 

解雇できる場合が厳しく制限されているため、敗訴リスクも高くなります。解雇は最後の手段と心得、まずは退職勧奨を検討される必要があります。

 

なお、退職勧奨が退職強要ととられないよう、あくまでも話し合いだという姿勢を崩さないことも重要です。

 

強引な解雇を避けるためには、まずは採用のところでミスマッチを避けるということも大切です。採用面接等ですべてを見抜くのは困難でしょうから、いわゆる試用期間のところで会社が求める人材なのかどうかを判断する必要があります。(ただし、試用期間中の解雇でも、解雇権濫用法理が働きますから安易な解雇は厳禁です。)

 

厚生労働省のモデル就業規則は「試用期間」について、以下のように記載しています。

 

第〇条 労働者として新たに採用した者については、採用した日から○か月間を試用期間とする。  

 

2 前項について、会社が特に認めたときは、試用期間を短縮し、又は設けないことがある。 前項について、会社が特に認めたときは、試用期間を短縮し、又は設けないことがある。  

 

3 試用期間中に労働者として不適格と認めた者は、解雇することがある。ただし、入社後14日を経過した者については、第〇条第〇項に定める手続きによって行う。 

 

4 試用期間は、勤続年数に通算する。

 

しかし、この就業規則によると試用期間を短縮することはできても、「延長」することはできません。

 

採用のミスマッチを避けるという点では、試用期間を「延長」できるような就業規則を定めておくべきだと言えます。このような就業規則を定めておけば、本採用すべきか未だ見極めがつかない…という場合に、試用期間を延長しさらに適性を見極めることができるのです。

 

試用期間にも解雇権濫用法理の適用があると述べましたが、本採用の場合と比べて緩やかに判断されますので、試用期間を延長できることには大きな意味があります。従業員の方にとっても、自分に適性のない職場でストレスフルに働くよりは、次の自分に合った職場を見つけて働く方がよっぽど幸せなはずです。

 

このように採用のミスマッチを避けることは、労使双方にとってメリットがあると考えます。

 

その他、解雇に備えるという観点で見た場合には、就業規則の服務規律の項目などを工夫したりすると良い場合もあります。多くの中小企業の方々の就業規則は、厚生労働省のモデル就業規則、をほぼそのまま使っておられることが多いと思います。

 

ただ、これまでお話ししてきたように、少しの工夫で、とても使い勝手の良いものに改良することができます。本当は、個々の企業がそれぞれの就労実態に合った形で、就業規則をアップデートしていくといざという時の備えになり有用です。

 

弁護士(顧問弁護士がいる時には顧問弁護士)や社労士などの専門家に、自社の就業規則について一度相談されると良いと思います。

 

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