長期金利の動き読めず…思い出される「2006~07年」
2023年に入り、仮に、②利上げ継続となれば、利上げの終着点(ターミナルレート)が上がるので、長期金利は上昇するでしょう。
反対に、①利上げをいったん停止して様子見に転じると、[図表4]の【右側の赤線で囲んだ部分】に示すように、その後のインフレが収束するかしないかで、A.利下げなのか、B.次の一手が利上げなのか(=利上げ再開なのか)が決まります。
仮に、A.利下げなら、インフレは収束していますから、長期金利は低下するでしょう。
反対に、B.利上げ再開なら、インフレは収束していませんから、利上げの終着点(ターミナルレート)がふたたび上がり、長期金利は上昇するでしょう。
要は、「長期金利の動きはまだまだわからない」ということです。
その「わからなさ」をよく表すものとして、(筆者が鮮明に覚えている)2006~2007年のケースでいえば、FRBは、2006年6月に政策金利5.25%で利上げを停止したあと、マーケットは「次は利下げだ」ということで、長期金利は4%台前半まで低下しました。
しかし、インフレ率が収まらず、「むしろ、次は利上げではないか」「様子見が思ったより長く続くのではないか」ということで、長期金利はふたたび上昇し、投資家は右往左往しました。
「政策金利据え置き」後の道のりは長い…分散投資を
時計の針を現在に戻せば、仮に、(現在は3.75~4%である)政策金利の「真のターミナルレート」が6~7%であったとしても、筆者は、FRBがこの先、政策金利を6~7%まで一気に引き上げることはなく、おそらく、どこかでいったんは「据え置き」に転じるとみています。
そして、いったん据え置きになったら、通例どおり「次は利下げだ」とばかり、長期金利には低下圧力が生じる可能性があります。しかし、2006~2007年の例が示すとおり、まだそこにいたっても、「その先はわからない」と考えておくべきでしょう。
株式市場はまだまだ流動性が潤沢です。政策金利よりもインフレ率のほうが高く、実質政策金利はマイナスです。FRBによる資産圧縮(QT)も始まったばかりです。
今後、たとえばFRBに加え、欧州中央銀行(ECB)なども資産圧縮(QT)の輪に加わり、本格的な引き締めが進むまで、景気も金融政策も明確な方向性は見えないかもしれません。
「早く景気後退が来てくれれば話は早い」のですが、そうも行かず、道のりは長いかもしれません。
引き続き、幅広い資産での分散投資が求められます。
重見 吉徳
フィデリティ投信株式会社
マクロストラテジスト
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