ウクライナ侵攻で改めてみえた「日本の低い自給率」
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で改めてみえてきたのは、日本は穀物とエネルギーの自給率が低いということです。
日本のカロリーベースの食料自給率はわずか38%です。食料自給率については、カロリーベースなのか、生産額ベースなのかがいつも議論の対象になります。
有事において重要なのは、野菜や高級果物というよりも、穀物や家畜の飼料でしょうから、筆者はカロリーベースをみるべきという考えです。
また、アジア地域での有事では、貿易上重要な海上交通路(シーレーン)が封鎖されると考えておくべきでしょう。東アジア地域の重要なシーレーンが封鎖され、西太平洋の航路(フィリピン沖)にう回する場合には、いまの2倍のタンカーが必要になるともいわれています。
世界の輸送タンカーの稼働率を考えれば、短期間での用立ては難しく、必需品の供給は大幅に減少します。
日本が「普通の国」になるための“3本の矢”
日本は、国家と経済の安全保障に関連する政策を強化・加速させる必要があるでしょう。いずれも「自ら」がキーワードです。
1本目の矢は、「自衛能力の引き上げ」です。
たとえば、航空自衛隊に関してよく指摘されるように、整備部品の在庫が不足しているために、使用していない機体から部品を外して転用する「共食い」の状態は、稼働率が落ち、修理も遅延することを示唆するため(また、他国に対しても日本の防衛力の乏しさを示すことになるため)、早急に解消されなければなりません。
あるいは、最近議論されているように、防衛費の見た目を増やして、実額を抑制すべく、(他の先進国では軍の配下にある一方、日本では国土交通省の所管である)海上保安庁の予算を防衛費にカウントするような措置も避けるべきでしょう。
そして、財源は租税のみならず、防衛国債も検討すべきでしょう。抑止力のための現在の防衛支出は、将来の世代もその役務(サービス)を受けることになります。
財政を気にして抑止力の積み上げを怠り、国家が侵攻を受ければ、元も子もありません。また、現在の日本は、政府支出が民間投資をクラウディングアウトするほど、総需給はタイトではありません。
合わせて、サイバー防衛を含む研究・開発については民間部門へのインセンティブの提供が必要です。4兆円を超える日本の科学技術関係予算の一部を、防衛関連の技術開発に充てるべきでしょう。
また、ESG(環境・社会・ガバナンス)の圧力下で防衛関連事業を継続する日本の企業が、売り上げや利益を確保できるように、入札方式の変更や装備移転、海外への売り込みの支援なども検討することが考えられます。
また、予算や装備だけでなく、関係閣僚や省庁、自治体が有事のシミュレーションを繰り返し行って問題点を洗い出し、これを国民と共有しつつ、解決策を講じる必要があるでしょう。
情報戦やサイバー戦を含め、どういったきっかけで有事が始まり、どの地域が対象になり、どの程度の数の市民の退避が必要になるのかなどを国民が知っておくことも極めて重要です。