“DXコンサルタント”日淺氏によるプロジェクト評価
※プロジェクトの対応を☆により評価
【経営者・経営幹部の対応】★☆☆
60代以上で製造業などIT分野に触れてこなかった経営者に多い視点です。この経営者からしたらシステムの話を理解するのは難しいかもしれませんが、考えもしないのは問題です。トップの理解が追いつかずにDXを始められない、という会社も少なくありません。
【DX推進担当の対応】★★★
推進担当としてみれば、経営者に決裁してもらうことがゴールです。真正面からぶつかっても勝ち目がないことはわかっていますから、なんとか社内で情報収集と根回しをして進めていくことに。DXプロジェクトといっても、その必要性をあまり感じていない経営者には響きません。そこで業務改革などの話を通じて、将来の課題に目を向けてもらうのはよいアプローチです。
【現場の社員の対応】★★★
今回のケースは、そもそも現場の声が起点になっています。声を挙げたことで働き方が楽になる方向に会社が動いているので、決して無駄ではありません。大きな組織でも現場から改善要望が挙がることは、評価できるポイントです。ただ、声を挙げても変わらないという閉塞感が漂っているのも事実です。
DXにより得られたインセンティブ
基幹システムを入れ替えたことでクラウド化が進み、リモートワークができるようになり従業員の満足度がアップ。仕事のパフォーマンスも向上しました。出社を交代制にして出社率を3分の2に。現場はリモートワークが実現できて働きやすくなり「まさかが実現」と笑顔が増えました。システムの入れ替えには補助金を活用し、入れ替えコストを抑えることにも成功しています。
経営者・経営幹部の首を縦に振らせるには、まずは課題を整理し、それを踏まえてプレゼンに臨む必要があります。1つひとつ見ていきましょう。
課題1:古いシステムが業務の足かせに
業績も伸びて会社は順調に成長している一方で、それを支える従業員の働く環境に支障が出ていました。現場からすれば目の前の業務改善が第一優先事項ですが、経営陣からは現場の努力でどうにかならないかという意見が出ます。ポイントは短期と長期の成果を分ける考え方です。短期的には現場の人たちのインセンティブになり、 長期的には経営陣のインセンティブになるという座組みで考えましょう。
短期的な成果は「効果・効用」です。生産性の向上とか、働き方が楽になるなどが挙げられます。具体的には「数十時間の入力業務が1時間に短縮」「紙で管理していた伝票がすべてパソコン1台に」といった成果です。
長期的な成果は「少なくとも1年以上かけたあとに得られるもの」です。具体的には「人件費がOO%削減される」 「社員のITリテラシーが上がる」「無駄な業務が減りコア業務に集中できる」といったことです。これらを織り交ぜてアピールする必要があります。