「帰属意識」を醸成するノウハウ
ここまでの話をまとめると、「変化に富む、いまの時代で勝ち続けるためには、再現性を持った帰属意識醸成のノウハウを身に付けることが必須である」といえます。では、帰属意識を再現性高く醸成するノウハウとはどのようなものでしょうか。
その答えを導くうえで鍵を握っているのは、「同一ルール下=同一コミュニティ」という原理原則です。人はどのようなときに相手が同じコミュニティにいると感じるかについての答えがわかれば、社員の帰属意識を高めることができるようになります。
「同一ルール下=同一コミュニティ」とは?
「同一ルール下=同一コミュニティ」とは、私たちは同一ルール化にいる相手を同一コミュニティの人間と認識するという原理原則です。国には法律が存在し、スポーツにはルールが存在するのは、このためです。作られたルールを守り合えるからこそ国家やスポーツが成立することは、学ばずとも経験からイメージできるはずです。よって、会社組織(コミュニティ)をつくる際にも、まずはルール作りとその徹底(同一ルール下に置くこと)が基礎中の基礎となります。
会社の“ルール作りのための“ルール
会社組織の具体的なルールとして企業理念や就業規則が挙げられます。ただ、これらのルールでは社員を同一ルール下に置くことが困難なケースが多いです。
まずは企業理念についてです。企業理念はその性質上、曖昧であるべきです。企業理念は、北極星のごとく追っても追い切れない存在であり、それを軸に中長期の会社の戦略を立てるものであるからです。曖昧がゆえに同一ルール下にいるかどうかの判定をそれぞれの主観に委ねる形になってしまいます。就業規則は、労働基準法により定めることがマストなものであり、モデル就業規則などが存在するため、会社のルールとしては形骸化しやすい傾向にあります。
そこで必要となるのが、「同一ルール下=同一コミュニティ」専用のルール作成です。つまり、帰属意識を醸成するためには、メンバー全員を同一ルール下に置くことが必要であり、そのためには専用ルールを作成し、そのルールを徹底することが必要最低限の環境となります。
ルール徹底の必須条件
ルール徹底には必須の条件が2つあります。
2.そのルールは本人がやると決めたらやれる内容となっていること
項目1はたとえば、「退社時には机の上にモニタ、キーボード、マウス以外のものを置かない」というルールが該当します。これを、「机をきちんと整理整頓しましょう」としてはいけません。「整理整頓」の定義が人それぞれ異なるため、結果的に各人の主観に委ねることとなり、ルールが形骸化していってしまいます。
項目2については、メンバー全員を同一ルール下に置くためのルールは、誰もが守れるものにしなければならないということです。「予算目標の100%達成」といったルールでは問題があるということですね。
これは、外部要因やその人の能力不足が絡んできてしまうので、徹底するという趣旨との矛盾が生じてしまいます。先の「退社時には机の上にモニタ、キーボード、マウス以外のものを置かない」というルールであれば、誰もが守ることができます。
まとめ
これらを踏まえると、帰属意識を意図的に醸成するためにはなにをすべきかがみえてきたのではないでしょうか。ルール徹底のための必須条件を抑えた専用ルールを作成し、それを徹底することで同一コミュニティにいる認識をメンバーに与えていくことがその答えとなります。
帰属意識の醸成はじわじわと時間をかけるべきものではなく、トップのカリスマ性に頼るものでもありません。すべての経営者が意図的に環境設定できるものであり、1人でも多くの方が実践に移すことで、勝ち続けるための体質改善の基礎づくりとしてもらえれば幸いです。
入澤 勇紀
株式会社識学
営業1部部長 上席コンサルタント