世の中に出回る「お金」の量をコントロール
日銀の重要な仕事としてニュースに出てくるのが、金融政策です。金融政策には金融の引き締めと緩和があります。
金融の引き締めというのは、世の中に出回る資金の量を減らすことです。景気がよすぎてインフレが心配なときに、景気をわざと悪くしてインフレを防ごう、というわけですね。
もっとも、日本では30年以上にわたって金融の引き締めではなく緩和が続いていますので、引き締めの詳しい話はやめておきます。
金融の緩和というのは、引き締めの反対で、世の中に出回る資金の量を増やすことです。景気が悪いときに金融を緩和して、景気をよくしよう、ということですね。実際には、日銀が銀行から国債という証券を買って代金を支払うことによって世の中に資金を出す場合が多いですが、日銀が銀行に金を貸すと考えても問題ないでしょう。
通常であれば、世の中に出回る資金の量が増えると、金を借りたいという人より貸したいという人の方が多くなるので、金利が下がります。物の値段は売りたい人と買いたい人が同数となるように決まりますが、金利も貸したい人と借りたい人が同数になるように決まるからです。
金利といっても色々ありますが、ここでは銀行と銀行が金を貸し借りするときの金利のことだと考えて下さい。銀行が会社に貸すときは、それより少しだけ高い金利で貸すわけですが、その話はここでは忘れましょう。
金利が下がると「借金して工場を建てよう」という会社や「借金して家を買おう」という人が増えますから、失業者が建設労働者等として雇ってもらえます。
そうなると、雇われた元失業者が給料をもらうので、たとえばテレビを買うでしょう。そうなると、テレビメーカーが増産のために失業者を雇うでしょう。こうしたことが繰り返されることによって、失業者が減っていくわけですね。
景気低迷…金利を下げ続け30年、気づけば「ゼロ」に
上に「通常であれば」と書いたのは、いまが通常ではないからです。日本経済は、あまり景気がよくない状態が30年も続いていて、その間ずっと金融が緩和されていたので、金利が下がり続けてゼロになってしまっているのです。
金利がゼロのときには、日銀が金融緩和をしても、金利はゼロより下がることはありません。それなら、金融緩和をしても借金をして家や工場を建てる人は増えないので、あまり効果はないはずですね。
しかし、いまの日本銀行は、効果があると考えているので、金利がゼロなのに大量の資金を世の中に提供しています。それは、「金利がゼロでも大量の資金を世の中に提供すれば景気がよくなる」と考えているからです。
金利がゼロのときに大量の資金を提供すると景気がよくなるのか、というのは学者の間でも議論がある難しい問題です。また、「マイナス金利」という言葉をニュースなどで耳にしたことがあると思いますが、実は、金利はゼロ以下になることもあります。もっとも、この2点の話は少し難しいので、本稿では触れないことにして、別の機会に論じることにしましょう。
今回は以上です。なお、本稿はわかりやすさを最優先として書いていますので、細かい所について厳密にいえば不正確だ、という場合もあり得ます。ご理解いただければ幸いです。
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塚崎 公義
経済評論家
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