日本食は「成長途上の子ども」にこそおすすめ
ごはんに味噌汁、魚や野菜のおかずといった伝統的な和食が、健康にいいということは、知っている人も多いと思います。
中高年対象の健康診断の栄養指導でも、低脂肪でさっぱりした日本食がすすめられることが多いですから、日本食は「生活習慣病が気になる大人向けの食事」と思っている人もいるかもしれません。「子どもの舌には合わないようだし、そもそも食べない」と匙さじを投げてしまっている保護者はいませんか。
しかし大人だけでなく、成長途上の子どもにこそ、もっと食べてもらいたいのが日本食です。身体面でいえば20歳頃までは丈夫な骨や強い体をつくる基礎づくりの時期です。大事なときにけがや病気をせずに力を発揮できる体をつくるには、良質な栄養を十分に摂っておく必要があります。
いちばん影響力のある“薬”ともいえる食事
ところが最近の子は、中高生にもなるとスタイルや容姿が気になり始め、女子生徒を中心にダイエットを始める子が多くなります。食べる量を極端に減らしたり、一つの食品だけを食べ続ける「○○だけダイエット」など、誤った食事制限もよく見聞きします。
筆者が以前、「食と健康財団」の主催する「食と文化フォーラム」のコーディネーターを務めたときのことです。
そのときの講師は、エリカ・アンギャルさんというオーストラリアの女性でした。彼女はミス・ユニバース・ジャパン公式栄養コンサルタントで、本人もとても美しく、均整のとれたプロポーションの魅力的な女性でした。彼女がミス・ユニバース・ジャパンのファイナリストたちを次々と世に送り出してきたのです。
彼女はそのときの講演で、真の美しさの根本は食べ物であると強く訴えていました。
「賢く食べて内側からきれいになるのが本当のダイエットなのに、私が関わってきた若い女性たちは、みんな最初は“栄養の砂漠”状態でした。知識不足のまま、必要な栄養を断つダイエットをやっているんですね。とても危険なことです」
「近年流行りのダイエット法の多くは、西洋医学のカロリー摂取量に基づいたものです。ですが、西洋医学には食養生という概念がないのです。カロリー計算だけではビタミンやミネラルなど、人間に必要不可欠な栄養素をどう補うかという視点が欠落してしまいます。日本食のすばらしさを受け継いでほしいものです」
と警鐘を鳴らしていました。
彼女は『世界一の美女になるダイエット』(幻冬舎・2009年)の著者でもありますが、その著書でも「留学で日本に来て、まず思ったのは伝統食の素晴らしさでした。この栄養のバランスは世界一のビューティーフード。最高の化粧品と言っていいと思います」と日本食を称賛しています。
彼女の健康についての考え方、彼女はそれをフィロソフィ(哲学)と言っていましたが、それは次のようなものでした。
「健康な状態というのは、ただ病気をしていない状態であるというだけではありません。バイタリティやエネルギーに満ちあふれた最適な状態のことです。私たちを取り巻く環境(毎日の食事やライフスタイルなど)のほうが、私たちが親から受け継いだ遺伝子よりも、はるかに影響力があるのです」
「食事はいちばん影響力のある“薬”でもあります。健康的でバランスのとれたライフスタイルは極めて重要で、それは毎日の食事から始まります」
だから、もし中高生のお子さんがダイエットをしたいと言うなら「日本食を食べるとスリムになるよ。ミス・ユニバースの栄養コンサルタントも日本食を絶賛しているんだよ」と教えてあげてください。そして親子で食生活を切り替えていけばいいのです。
また身体面だけでなく学力という面でも、10代の頃の知的な成長は目覚ましいものがあります。
私自身も、中学を卒業したのに英語のbe動詞や、下手をするとアルファベットも怪しいという生徒を何人も見てきましたが、そういう子も学ぶ楽しさを知って夢中で学習に取り組むうちに、やがて難解な入試英語問題もすらすらと解答できるようになっていきます。スポンジに水が染み込むような若い人の吸収力には、すばらしいものがあります。
こういう時期にしっかり勉強して力を伸ばすには、やはり日本食がおすすめなのです。