前回は、充実した食生活とはどのようなものか、筆者の経験をもとに紹介しました。今回は、食習慣の見直しがもたらす恩恵を見ていきます。

60代以上からでも大きな効果がある「食生活の見直し」

筆者が家庭で食習慣の見直しをしましょうという話をすると、中高生の親御さんのなかには「今までジャンクフードで育ってきてしまい、今さら見直しても遅いのでは」と思う人もいるようです。小学校低学年くらいならまだしも、大きくなると親の言うことも聞かないし・・・という声も聞きます。

 

しかし人間の体は、約60兆個の細胞からできています。これらの細胞は新陳代謝によって古い細胞から新しい細胞に置き換わっていき、3~4カ月もすると全身の細胞がすべて新しく生まれ変わるともいいます。それを考えると、何歳から始めたとしても決して遅いことはないのです。

 

私と同年配の60代、70代の知り合いでも、食事内容を変えたことで体格や肌の色つやが見違えるように変わった人が何人もいますから、10代の子どもであればなおのこと、変化が現れやすいはずです。

親子の「共食」で「食わず嫌い」をなくす

また魚や野菜などを「食わず嫌い」で食べようとしない子どもには、それこそ親子の「共食」をおすすめします。海外の研究でも、子どもの偏食改善には、親が同じ食卓について苦手なものを食べてみせるのが、もっとも有効だという報告があります。

 

人間には自己防衛本能があり、今まで見たことや食べたことがないものは「危険」と感じ、避けようとする傾向があるそうです。その〝危険かもしれない〟ものを同じ種の仲間(つまり親や家族ですね)が食べている姿を見ると、「これは食べてもいいものだ」というシグナルとなって、防衛反応が薄まるというのです。

 

確かに学校給食などでも、仲間と一緒に食べることで偏食を克服できたという例は、よく耳にします。

 

それから、中学、高校と成長するにつれて、子どもの味覚は成長してくるものなのです。幼稚園や小学校時代にダメだったからと、食卓に出すのをあきらめてしまわず、調理法などを工夫しながら、根気よく挑戦を続けていきましょう。

 

そして、子どもが過去に食べられなかったものを少しでも食べられるようになったら、「すごいね! ピーマンの味がわかるなんて成長したね」と喜び、ほめてあげることです。

 

私の経験でも、それまで菓子パンやレトルト食品、コンビニ弁当など、ジャンクフード一辺倒のひどい食事をしていた子でも、食事が変わると、まず目の力が変わります。そして顔色がよくなり、笑顔が増え、学習中や生活のなかの表情も引き締まった「いい表情」になっていきます。

 

子どもにそんな変化が見えてきたら、しめたものです。学習面でもどんどん力をつけていく、その準備ができた証拠です。子どもがもともともっている潜在力を発揮できるようにするには、食の力が大きいのです。

 

想像してみてください。子どもは生き生きとして学習や生活に意欲的になり、お父さんお母さんはスリムで若々しい、より健康な体が手に入る――。食を見直すことは家族皆に多くの恩恵をもたらします。

 

最初から完璧な食生活を目指そうと気負わなくてもかまいませんから、できるところから一歩ずつ、親子の日々の食事を充実させていきましょう。

本連載は、2015年11月26日刊行の書籍『学力は「食育」でつくられる。』から抜粋したものです。記載内容は予防医学の観点からの見解、研究の報告であり、治療法などの効能効果や安全性を保証するものではございません。

学力は「食育」でつくられる。

学力は「食育」でつくられる。

池上 公介

幻冬舎メディアコンサルティング

勉強は「基礎が大事」と言われます。基礎がきちんとしていなければ、その上にいくら知識を積み上げても結局崩れてしまいます。同様に、学習に取り組む意欲や自己を律する自制心、困難に負けずに学び続ける気力・体力も大切です…

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