社会保障から見たESGの論点と企業の役割…健康経営を巡る「言説」の変遷を追い、今後の方向性を探る

社会保障から見たESGの論点と企業の役割…健康経営を巡る「言説」の変遷を追い、今後の方向性を探る
(写真はイメージです/PIXTA)

企業経営や投資の世界で語られる「ESG」。そのうち「S」の観点を意識しつつ、従業員の健康づくりの重要性が論じられる「言説」の変遷を追うことで、医療費適正化にとどまらない傾向が強まっている点をニッセイ基礎研究所 三原岳氏が解説します。

5―おわりに

今回はESGの「S」に絡む問題のうち、企業による健康づくりについて、その経緯や言説の変遷を考察しました。その結果、最近の傾向として、従来の医療費適正化という観点が後景に退き、働き方改革や非財務情報強化の観点で健康づくりが語られる場面が増えていることを確認できました。しかも、この流れは恐らく一層、強まると思われます。

 

しかし、健康という言葉を単に「病気がない状態」と狭く捉えるのではなく、社会的決定要因なども意識した取り組みが求められます。さらに介護離職や障害者雇用などを踏まえたトータルの視点を持って欲しいと考えています。

 

これでESGの「S」を社会保障政策・制度から考える連載コラムを終わります。途中、少し間が空きましたが、ここで取り上げた各テーマ(障害者に対する合理的配慮の提供を義務付ける改正障害者差別解消法の施行、障害者雇用、高齢者や認知症の人への対応、従業員の健康づくり)で、企業が果たす役割は非常に大きいと考えられます。

 

ただ、この連載でも何度か指摘した通り、企業が「社会の課題」から考えるのではなく、自らの商品やリソースから発想している傾向が見受けられます。今後、それぞれの企業が創意工夫しつつ、これらの分野について、企業経営にとってのプラス面だけでなく、社会にとっての価値を同時に追求して欲しいと思います。こうした積み重ねが結果的にESGの「S」への対処にも繋がると考えています。

 

※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年11月14日に公開したレポートを転載したものです。

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