(写真はイメージです/PIXTA)

近年、ハラスメントの法的整備が進むなか、パワハラに関する裁判事案が増えています。パワハラに関する裁判では、直接の加害者のみならず、会社が責任を問われる事例も少なくありません。そこで、Authense法律事務所の西尾公伸弁護士が4つの具体的な裁判事例とともに、パワハラの定義と社内で発生した際の対処法を解説します。

会社が問われる主な「法的責任」

社内でパワハラが起きた際、会社が問われる可能性のある法的責任は、次のとおりです。

 

使用者責任

使用者責任とは、会社の従業員など会社が雇っている人が事業の執行に関連して第三者に損害を与えた場合において、会社がその損害を賠償する責任を負うという制度です。

 

仮にパワハラが会社主導のものや会社ぐるみのものなどではなかったとしても、パワハラが会社の業務執行に関連して行われたものである以上、会社が使用者責任を問われる可能性が高いといえます。

 

なお、会社が従業員の選任や事業の監督について相当の注意をしたときや相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは使用者責任が免責されるとされていますが、このハードルは決して低くないとされています。

 

不法行為責任

不法行為責任とは、故意や過失によって他人の権利などを侵害した場合において、これによって相手へ生じた損害を賠償する責任のことです。

 

パワハラが会社主導で行われたものである場合や、会社ぐるみで行われたものである場合、パワハラの相談などへ適切に対応しなかったために被害が拡大したり継続したりした場合などには、会社に対して直接不法行為責任が問われる可能性があります。

 

債務不履行責任

債務不履行責任とは、義務を負っている者が義務を負っている者の責任によって、義務を履行できなくなった場合などに負う法的責任のことです。

 

会社は、従業員に対して安全配慮義務を負っています。労働契約法5条には、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と規定されており、会社には、従業員に対する安全配慮義務が課されています。

 

社内でパワハラが起きたにも関わらず、これに対して適切に対処しなかった場合には、この安全配慮義務に違反したとして、会社の債務不履行責任を問われる可能性があります。

 

次ページ「パワハラ裁判」の具体的事例

本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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