前回は、税制や補助金・助成金を活用した具体的な節税策を紹介します。今回は、実際に筆者が関わったメーカーの実例を見ていきましょう。

制度利用による設備購入費の削減と、圧縮記帳で節税

前回に引き続き、税制や補助金・助成金を活用した節税策を見ていきます。今回は、筆者自身が関わる六角レンチの専業メーカー「A社」の実例を挙げて「税制」「補助金・助成金」の活用方法を説明しましょう。

 

A社では、1500万円で機械設備を導入した際、経済産業省の「ものづくり・商業・サービス補助金(ものづくり補助金)」の申請を出して許可を受けました。

 

「ものづくり補助金」とは中小企業や小規模事業者に対する補助金のひとつで、革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善など、一定の条件を満たした企業に対して支払われます。

 

A社の場合、機械設備の購入資金1500万円のうち、最高限度額である1000万円の補助金を受けることができました。これによって機械設備を自己負担500万円で新設できたことになります。

 

ただし、このまま申告すれば補助金1000万円に対しても課税されてしまいます。そこで「圧縮記帳」を利用して補助金1000万円を取得価格より減額しました。これによって340万円の節税効果(1000万円×法人税等実効税率34%)が得られたのです。

 

さらに、機械設備の帳簿価格500万円に対して、別途、経済産業省に「生産性向上設備投資促進税制」の申請を行いました。前述のように、2016年3月末までは即時償却が可能だったため、500万円全額を損金計上することができたのです。これによって170万円(500万円×法人税等実効税率34%)の節税効果が得られました。

 

ポイント1:ものづくり補助金の受給により機械設備の簿価価格を500万円に

ポイント2:ものづくり補助金1000万円の課税分を圧縮記帳で全額控除

ポイント3:機械設備の簿価価格500万円を生産性向上設備投資促進税制で即時償却

新規採用によって2000万円もの補助金をゲット

A社の工場が手狭になったことから、1億円を投じて一部工場を建て替えました。この1億円に対しても「生産性向上設備投資促進税制」の即時償却を実施し、3400万円の節税効果(1億円×法人税等実効税率34%)を得ています。

 

新工場では7名の正社員を新規採用しました。この県では正社員1人採用するにつき100万円の雇用促進補助金が出ることから合計700万円の補助金を受給しました。加えて新工場を建設したことで県と市から合計2000万円の補助金も支給されました。

 

ポイント1:新工場の建設資金1億円を生産性向上設備投資促進税制により即時償却

ポイント2:正社員7名の採用により雇用促進補助金700万円受給

ポイント3:新工場の建設に対して県・市から2000万円の補助金を受給

 

ここで紹介した税制や補助金はほんの一例です。国や各自治体ではさまざまな取り組みを行っていますので、常日頃から情報を収集されるといいでしょう。

 

さらに顧問税理士を通じて専門家を紹介してもらうのもひとつの手段です。税制や補助金に詳しい中小企業診断士とつながりを持てば、経営や事業を有利に進める手助けとなるはずです。

本連載は、2016年8月2日刊行の書籍『税務署が咎めない「究極の節税」』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

税務署が咎めない 「究極の節税」

税務署が咎めない 「究極の節税」

辻 正夫

幻冬舎メディアコンサルティング

「せっかく稼いだお金を税金に持っていかれてたまるか!」 そんな思いから多くの経営者が節税に励んでいます。しかし、ひとたび節税の方法を間違えると税務署から捜査の手が入り、経営が楽になるどころか危機的な状況に陥り、…

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