前回は、節税目的の中古クルーザー購入がおすすめできない理由を説明しました。今回は、節税目的の「中古不動産」購入について検証します。

分割計上が難しく、修繕リスクも付きまとう中古物件

たとえば節税を謳う書籍やインターネットなどを見ると、「中古不動産の購入で大きく節税」などといった情報がたくさんあることに気づきます。中古物件は条件によっては耐用年数が大幅に短くなるため、償却率を高めて早期に節税できるという意味なのでしょう。

 

しかし中古物件は、建物本体と建物附属設備を分割計上するのが難しいうえ、修繕リスクを考慮に入れなければなりません。新築の場合は最初の10年ほどは修繕の必要はありませんが、中古不動産は物件によっては取得直後から修繕が必要になる可能性があります。

 

目先の節税にとらわれてはいけません。新築と中古でどちらが効果的な投資なのか、自社の業績予想や経営戦略などとも照らし合わせながら計画的に節税を進めてください。

中古物件購入の際は、必ず「修繕履歴」の確認を

たとえば新築と中古を天秤にかけ、中古不動産を購入することに決めたとします。その場合は中古物件の「修繕履歴」を必ず確認してください。不動産業者によっては修繕リスクを正しく説明しない可能性があります。

 

修繕履歴は「エンジニアリングレポート」と呼ばれる資料にすべて載っています。業者は所持していますから、このレポートを必ず確認し、中古物件購入後の修繕計画を立ててみてください。どの時期にどの程度の修繕費が必要となるのかがわかるため、投資計画をつくりやすくなります。

 

あるいは修繕費を節税する方法もあります。たとえば事務所を改装した際、「事務所改装費一式500万円」というような見積もりでは損金計上できません。500万円すべてが資産(資本的支出)とみなされてしまうからです。

 

ポイントは、修繕内容を一つひとつ切り分けて細かく見積もり、「修繕費としての支出」である点を明確にすることです。修繕費は「固定資産の維持管理」「固定資産の現状回復」に該当するものとされ、床や壁紙の張り替え、外壁塗装や防水補修などはすべて修繕費として損金計上が可能です。

 

そのほかさまざまな要件がありますから、詳細は顧問税理士などに相談してみてください。

本連載は、2016年8月2日刊行の書籍『税務署が咎めない「究極の節税」』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

税務署が咎めない 「究極の節税」

税務署が咎めない 「究極の節税」

辻 正夫

幻冬舎メディアコンサルティング

「せっかく稼いだお金を税金に持っていかれてたまるか!」 そんな思いから多くの経営者が節税に励んでいます。しかし、ひとたび節税の方法を間違えると税務署から捜査の手が入り、経営が楽になるどころか危機的な状況に陥り、…

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