前回は、役員賞与を「事前確定届出給与」で損金化する方法を紹介しました。今回は、従業員への「決算賞与の支給」を活用した節税策を見ていきます。

決算までに支給することで、損金計上が可能に

支出を伴いますが、従業員への決算賞与の支給は積極的におすすめしたい節税です。決算賞与は損金計上が可能なので節税になりますし、何より従業員のモチベーションアップにつながります。

 

まず、決算賞与を使った節税でベストな方法は「決算までに実際に支給すること」です。支給すれば振り込み証拠が残り、問題なく損金計上が可能です。

 

しかしよくあるのは、決算で予想以上に利益が出たことがわかり、申告までに慌てるパターンです。決算期の前に決算賞与を支給したと偽装するのは脱税ですから論外として、やはり事前の段階で計画的に対策を講じておきたいものです。

 

ポイントは決算期末までに従業員に支給額を「通知」しておくことです。通知のタイミングは決算期末ギリギリまで可能ですから、業績予想がある程度確定した段階で決算賞与の支給とその額を決めることができます。

 

こうして決算までに通知し、かつ決算後1カ月以内に決算賞与を支給することで(通知を出した年度内に)損金計上が可能となります。

 

ただし、通知をした場合は決算賞与を必ず支払わなければなりません。仮に通知をしたことを根拠に決算賞与の予定額を損金計上し、結果として未払いになった場合は修正申告をしなければならないため、くれぐれも計画的に進める必要があります。

優秀な人材をつなぎ止めておくためにも必要

決算賞与は節税で使えるがキャッシュが会社から出るじゃないか――そう思う人もいるでしょう。

 

しかしこれは、日頃頑張って働いている従業員に利益を還元するための方法でもあります。私がこの決算賞与の支給を積極的にすすめるのは、むしろ節税以上に従業員の働きに報いる方法だからです。

 

会社は従業員がいるからこそ売上が立ち、利益が出て事業を継続できるようになります。その従業員を第一に考えた経営をすることが、私自身のポリシーでもあります。

 

そのため、次のような考え方をすすめています。

 

●3分の1は従業員に還元

●3分の1は納税

●3分の1は会社に内部留保

 

実際には、この割合で進めても3分の1以上の利益が会社に残ります。仮に利益が1000出たとして、3分の1に当たる300を従業員に決算賞与で支給したとします。まずこの300は損金として計上できます。

 

さらに残りの700に対して法人税等がかかり、34%とすると約240。700から240を引いた460が当期純利益として会社に残り、内部留保となります。3分の1ずつとはいえ、結局は半分近くが内部留保として会社に蓄積されるのです。

 

節税と利益のバランスを取りキャッシュと内部留保をいかに増やすか、利益の蓄積と従業員への還元のバランスを取り組織の結束をいかに高めるか――。経営者には、このさじ加減が常に求められています。「究極の節税」を実践するうえでも重要な経営判断です。

 

とくに中小企業は今後、人材難の時代が続くと見込まれています。今いる従業員を大切にして、優秀な人材が育てば会社は成長していきます。優秀な人材のモチベーションを高め、会社につなぎ止めておくためにも決算賞与での利益還元は大切だと考えます。

本連載は、2016年8月2日刊行の書籍『税務署が咎めない「究極の節税」』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

税務署が咎めない 「究極の節税」

税務署が咎めない 「究極の節税」

辻 正夫

幻冬舎メディアコンサルティング

「せっかく稼いだお金を税金に持っていかれてたまるか!」 そんな思いから多くの経営者が節税に励んでいます。しかし、ひとたび節税の方法を間違えると税務署から捜査の手が入り、経営が楽になるどころか危機的な状況に陥り、…

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