より効果的な節税が可能!?「役員報酬」は控えめにすべき理由

より効果的な節税が可能!?「役員報酬」は控えめにすべき理由

前回は、事業投資による「内部留保の拡大」が究極の節税となる理由を説明しました。今回は、より効果的な節税のため、役員報酬は控えめにすべき理由を見ていきます。

「高額な役員報酬」を受け取る経営者は多いが・・・

節税の説明をするに当たり、「益金」と「損金」の概略をお伝えします。通常、企業活動における経理・会計では、会社に入ってくるお金を「収益」、事業活動の支出を「費用」とそれぞれ考えます。一方、税務上は、会社に入ってくるお金・財産を「益金」、会社から出ていくお金・財産を「損金」としています。

 

この益金から損金を差し引くことで、法人税等を算出する「課税所得」を導き出せるのです。以降、「益金」「損金」「所得」という表現で統一して解説していきます。

 

「経営者個人と法人のトータルで節税する」とは、私が考える節税の大原則です。中小企業の多くは同族会社であり、「経営者=オーナー」というケースがほとんどです。そのため、「個人と会社のどちらにキャッシュを残しても経営者(オーナー)にとっては同じ」という前提が成り立ちます。

 

ところが、「自分の会社なのだから役員報酬もたくさん取って当たり前」と考えて、高額の役員報酬を受け取っている経営者が少なくありません。しかし節税の目的である「会社にキャッシュを残す」ことを前提に考えると、トップが役員報酬をたくさん取るべきではありません。

 

所得税の最高税率は、2016年現在45%(課税所得4000万円超)になっており、これに住民税10%をプラスすると55%となります(以下の図表参照)。中小企業のオーナーであれば、最高税率を超える役員報酬を得ている人も少なくないはずです。

 

[図表]所得税の速算表

 

役員報酬を多く取ると、会社からキャッシュが出ていくだけでなく経営者個人が得た役員報酬に対して所得税・住民税等の最高税率55%が課されます。法人税等の実効税率を34%とすれば、実に21%も余分に税金を払うことになるのです。個人と法人のトータルで節税を考えると、これほど非合理的なことはないでしょう。

 

そうではなく、代表者個人の役員報酬は法人税等と同額程度の所得税等になるまで抑え、その分のキャッシュを会社に残すことで、結果的に余分に支払っていた税金が節税できます。

なぜ役員報酬は「1200万円」が基準になるのか?

役員報酬の金銭的な目安は、1200万円程度を基準に考えてください。「所得税+住民税」と「法人税等の実効税率」の推移を比較した際、所得税等が法人税等と同額になるラインだからです。

 

そもそも役員報酬は会社の経営が順調であってこそ得られるものです。だからこそ節度を持って役員報酬の金額を決定することが大切です。

 

ただし、反対の意見もあります。「利益が出れば役員報酬で個人資産を増やして、業績が厳しくなれば個人の資産を会社に入れたらいい」という考え方です。

 

どちらが正しいのかを突き詰めると人生論に行きつくので一概にはいえませんが、少なくとも業績が厳しくなってから手を打つという考え方は経営リスクを増大させるといえます。

 

なお、同族会社の代表者の妻や親族が会社の仕事に従事しているのであれば、正しい手続きを経て役員報酬を支給し、代表者と所得の分散化を図り節税するといいでしょう。もちろん、勤務実態のない親族に高額な役員報酬を支払うのは、脱税に問われますから絶対にやってはいけません。

本連載は、2016年8月2日刊行の書籍『税務署が咎めない「究極の節税」』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

税務署が咎めない 「究極の節税」

税務署が咎めない 「究極の節税」

辻 正夫

幻冬舎メディアコンサルティング

「せっかく稼いだお金を税金に持っていかれてたまるか!」 そんな思いから多くの経営者が節税に励んでいます。しかし、ひとたび節税の方法を間違えると税務署から捜査の手が入り、経営が楽になるどころか危機的な状況に陥り、…

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