(写真はイメージです/PIXTA)

住宅ローンの残債がある家を相続した場合、どうすればよいのでしょうか? 相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が詳しく解説します。

団信契約がなかった…支払えない場合は?

被相続人が団信に加入しておらず、かつ住宅ローンの返済が相続人にとって重い場合には、どのような対応を取ればよいのでしょうか? ここでは、2つの対応方法を紹介していきます。

 

金融機関にリスケを相談する

ひとつ目の対応方法は、借入れ先の金融機関にリスケを相談することです。 リスケとは「リスケジュール」の略称で、住宅ローンの返済について、毎月の支払額などを減額してもらうなど、返済の条件を見直してもらうことをいいます。

 

金融機関としても、無理な返済を迫って返済が不能となるよりも、返済期間が多少延びても確実に返済してもらえるほうが得策です。そのため、毎月の返済額があまりにも少額であるなど、よほど無理な内容でさえなければ、交渉や相談に応じてもらえることが多いと考えられます。

 

相続放棄を検討する

リスケをしてもなお返済が困難である場合や、家を売却しても返済できる見込みがないオーバーローンの状態となっている場合には、相続放棄を検討することもひとつです。相続放棄とは、家庭裁判所へ申述することにより、はじめから相続人ではなかったものとされる手続きを指します。相続放棄が認められると、被相続人の住宅ローン返済義務から解放されます。

 

ただし、家と土地は相続したいけれど、ローンだけは放棄するなどといった都合のよいことはできません。相続放棄をすると、マイナスの財産も承継しなくて済む一方で、家や土地、預貯金などプラスの財産も一切相続できなくなります。

 

相続放棄には注意点が少なくありませんので、相続放棄を検討する際にはあらかじめ相続に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

住宅ローンは相続税へどう影響する?

住宅ローンを引き継ぐ場合、相続税の計算にはなにか影響があるのでしょうか? 最後に、住宅ローンと相続税について解説します。

 

基礎控除を超える財産があれば相続税の対象になる

相続税は、実はすべての相続に対してかかる税金ではありません。 相続税の申告が必要となるのは、遺産総額など相続税の対象となる財産の合計額が、次の式で算定される相続税の基礎控除額を超える場合のみです。

 

相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

 

この計算式に当てはめると、法定相続人が2名の場合の相続税の基礎控除額は4,200万円、法定相続人が3名の場合の基礎控除額は4,800万円です。この数字が相続税の課税対象かどうかの境目となりますので、ご自身やご家族に関連する金額だけでも覚えておくとよいでしょう。

 

住宅ローンなどマイナスの財産は控除して計算する

相続税は、被相続人のプラスの遺産に過去の一定の贈与を加算した金額から、債務を控除した残額に対して課税されます。 この「債務」には、次のものが該当します。

 

・住宅ローンなどの借金

・死亡時点で未払いとなっていた医療費や税金などの未払金

・葬儀費用

 

つまり、被相続人に住宅ローンの残債があった場合には、相続税の計算上、その残債分はプラスの財産から控除して計算することが可能だということです。 このように、相続税の計算上債務を差し引いて計算することを「債務控除」といいます。

 

団信で完済された住宅ローンは債務控除の対象外

相続人が引き続き返済する必要がある住宅ローンは、相続税の計算上債務控除の対象となることは先ほど解説したとおりです。

 

しかし、団信に加入しており、死亡の時点で全額が完済された住宅ローンは債務控除の対象とはなりません。被相続人の死亡時点で住宅ローンが完済された以上、相続人が債務を負ったわけではないためです。一方で、生命保険は通常一定の非課税枠を引いた残額が相続税の対象となるものの、生命保険の1種である団信から支払われた保険金は相続税の課税対象から除外されています。

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まとめ

被相続人の住宅ローンが残っていた場合には、まず団信の加入の有無を確認することが先決です。団信への加入があれば、相続人が住宅ローンを返済していく必要はないためです。

 

団信への加入がない場合には、住宅ローンは相続人が承継します。 家を相続した人が住宅ローンを承継するなど特定の相続人がローンを引き継ぎたい場合には、あらかじめ金融機関へ相談し、承諾を得るようにしましょう。返済が難しい場合には、リスケを相談したり相続放棄を検討したりすることも方法のひとつです。

 

 

堅田 勇気

Authense法律事務所
 

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