(写真はイメージです/PIXTA)

住宅ローンの残債がある家を相続した場合、どうすればよいのでしょうか? 相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が詳しく解説します。

遺産分割協議の取り決めが金融機関に対抗できない理由

遺産分割協議で決まった住宅ローンの返済者についての取り決めは、なぜ金融機関に対抗できないのでしょうか? この理由は、極端な借金逃れを防ぐためであると考えられます。

 

仮に相続人同士の内部的な取り決めが金融機関に対しても有効だとすれば、資産をほとんど持っておらず返済の余力もない人にローンだけを相続させるようなことができてしまいます。その後、ローンを承継した人が自己破産などをしてしまえば、金融機関はそれ以上返済を受けることができません。

 

これはやや極端な例ではありますが、金融機関にとってこうした不測の事態を避けるために、遺産分割協議が成立したのみでは、金融機関に対抗できないとされています。

 

ほかの相続人がローンを返済した場合には「求償」ができる

長男が住宅ローンの全額を承継する遺産分割協議が成立したとしても、金融機関が二男や長女に対してローンの返済を求める可能性があります。この場合、長男の代わりに二男や長女が住宅ローンを一部返済した場合には、返済した分の額を二男や長女から長男に対して請求することが可能です。 この請求のことを、法律用語で「求償」といいます。

 

求償が可能になるという点で、住宅ローンなどマイナスの財産について遺産分割協議を行うことには意味があります。

 

実際は「家の相続者=住宅ローンの相続者」を承認することが一般的

遺産分割協議が成立したのみでは、住宅ローンの承継者について金融機関に対抗することはできません。しかし、長男が住宅ローンの全額を引き継ぐことを金融機関が承認すれば、住宅ローンは正式に長男が承継することとなり、以後は二男や長男が返済を迫られることはなくなります。

 

現実的には、よほど長男の返済能力が不安定であるなどの特殊な場合を除き、金融機関は家を相続した長男が住宅ローンを引き継ぐことを承認するケースが大半でしょう。一般的に、家やその敷地である土地に担保である抵当権もつけられており、仮に長男の返済能力が被相続人より多少劣る場合であったとしても、抵当権を実行することで債務を回収ができない可能性は低いためです。

 

ただし、場合によってはその家に同居する長男の妻などが連帯保証を求められる可能性はあります。

 

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