前回は、「財産の棚卸し」で得られる3つのメリットを見てきました。今回は、処分すべき不良不動産と処分しなくていい優良不動産の見分け方を説明します。

まず「収益性や換金性」があるかどうかで判断

自身の不動産がどのような状態になっているかを把握することが大事で、そこから必要な処置を施すべきとお伝えしました。しかし、処分すべき不良不動産と、処分しなくてもいい優良不動産、この区別がついていなければ、その後にすべき行動を誤ってしまいます。

 

前回までの記事を読んでいただいた人であれば、不良不動産と優良不動産の区別の仕方はわかってきているかと思いますが、この2つを判断する基準としては、まず「収益性や換金性」があり、「保持することがプラスに働くかどうか」にあると言えます。

 

つまり、「相続税評価額の高い土地」「収益性の低い不動産」「共有状態になっている不動産」は、明らかにこれにはあてはまりませんので、不良不動産だと判断できます。それでは、それ以外にどのようなものが不良不動産となるか考えていきましょう。

 

例えば、数多くの地主が所有している可能性の高い貸宅地などはどうでしょうか。貸宅地ということは、地主が底地権を持っているということになります。借地権は別の第三者が持っていますので、仮に売却をしたいと考えてもすぐにはできない状態です。つまり、換金性は悪いことになります。

 

借地権者からの地代収入が、固定資産税を払っても余りあるほど多い、というのであれば、収益性の面で優れていることにはなりますが、今の時代で、地代収入が多いというのは少し考えにくいことです。むしろ、地代収入が固定資産税を下回るような状況が実際にはあるかもしれません。たとえ収入がプラスになったとしても、きっと額は大きくないことでしょう。こう考えると、この貸宅地は総じて換金性が悪く、土地としてある程度の高い相続税評価額が見込まれるので、不良不動産である可能性が高いと言えます。

「まっさらな更地」は優良資産? 不良資産?

また、広い更地の場合はどうでしょうか。更地というのは建物などの建築物が建っていない「まっさら」な状態の土地のことです。何も建っていないということは、借地権や地役権などの権利も付いていないので、売却しやすく換金性はあることになります。

 

ただし、単純に売却しやすければいいというものでもありません。相続の面からすると、更地に対しては、何の評価控除もありませんので、路線価評価なら路線価の額がそのまま相続税評価額として計上されます。

 

また、更地ということは、固定資産税は課税されるものの、収益は生み出していません。換金性は高いのですが、保持することで財産が減ってしまうことを考えると、プラスに働かない不良不動産として考えることが妥当です。

 

しかし、この更地に関して言えば、換金性が高いというメリットがありますから、活用する方法やその時期を見定めるためにそのまま更地で所有していることは、それほど問題になりません。また分割して相続することが前提であれば、広い更地は分割もしやすい状態であるので、争いは起きにくいと言えます。

 

このあたりは、その時の状況に応じて、どう考えるかを判断することになります。しかし、意図が何もない状態で更地として放置しているという場合は明らかに不良不動産となるので、早めに今後の活用法を検討すべきだと思います。

 

他にも、個々のケースによって優良不動産となったり不良不動産となったりするものはいろいろとありますが、収益性や換金性と、保持することがプラスになるかどうかという視点を持っていれば、自分たちで判断することができるようになっていきます。

本連載は、2013年12月2日刊行の書籍『ワケあり不動産の相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

ワケあり不動産の相続対策

ワケあり不動産の相続対策

倉持 公一郎

幻冬舎メディアコンサルティング

ワケあり不動産を持っていると相続は必ずこじれる。 相続はその人が築いてきた財産を引き継ぐ手続きであり、その人の一生を精算する機会でもあります。 にもかかわらず、相続人同士が財産を奪い合うといったこじれた相続は後…

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