相続全般の知識に加えて、不動産の知識も必要
不動産相続について詳しくなり、優良不動産と不良不動産の見分けがついて、不良不動産に対しては適切な対処ができる。誰もがこのようになれればもちろん言うことはありません。しかし現実にはそのようなことは難しいでしょう。
ではどうすべきかと言うと、プロの専門家にアドバイスを求める他はないように思います。そもそも不動産相続には、2つのハードルが存在すると思ってください。
ハードルの1つは、相続全般に対する知識が必要であることです。財産の棚卸しをして、自身の財産を把握し、その評価額の算出を進めます。その後、相続税を試算し、相続税対策の立案と実施をしていきます。相続案件を扱う税理士であれば、ここまでのことはほとんど把握していることでしょう。
しかし、そこにはもう1つのハードルが隠されています。それは、不動産についての知識が必要であるということです。ワケあり不動産を見抜く力、そのワケあり状態を解消する力、ワケあり状態を作らないためのコンサルティング力、そういったものが必要になるのです。これは、相続案件を扱う税理士でも、知識がある人とない人で二分されるでしょう。
この2つのハードルをクリアできる人と一緒に対策を進めていかないと、不動産相続をうまく乗り越えることは難しいのです。当然、一般の人が安易に手を出すべきではありませんし、この分野に詳しくない税理士にお願いすべきでもありません。つまり、不動産相続に長けた税理士などの専門家に依頼をすることが、相続をこじらせないための近道になります。
不動産購入の「リスク」を考慮した助言を受けられるか
ただ勘違いしないでいただきたいのは、不動産相続に詳しい税理士とはいえ、不動産経営を専門とする業者ではないということです。不動産を購入して節税できることはわかりますが、それをお勧めするようなスタンスではありません。
何度もお伝えしている通り、不動産の購入時には節税と同時に収益性を考える必要があります。しかし、収益性を考えたところで、それが実際にどうなるかは、やってみなければわかりません。そういう意味では、どんなに慎重を期しても、リスクを抱えることになるのです。
現在では、相続税対策に関する情報は至るところで取得できますが、中には「とにかく不動産を使って節税すべし」といった内容のものもあります。そういったものは半信半疑で考えるようにしたほうがいいと思います。見えづらい収益性というリスクを抱えてまで、不動産を購入する価値があるのかどうか、そこまで言及して初めて信憑性に足る情報であるのです。
筆者の場合は、まずお客様がどうしたいかというニーズを詳細に聞き取ります。そしてその内容に無理がないかどうかを判断し、どの程度のリスクが伴うかを説明し、失敗をしないためにはどのようにすればいいかとアドバイスをすることにしています。その上でお客様にどうするかを判断していただきます。
賃貸不動産を購入することになれば、それもリスクを説明してのことですが、お客様の年齢、借り入れの金額と期間、収益性の見込みなどを総合的に考えてから、実際に購入する不動産を決めていきます。当然、相続発生後に相続することになる相続人のことも視野に入れて考えていきます。
もし、今後の収入が年金しかないような人であれば、万一収益性が悪くなった時にお金の工面に苦労してしまうので、不動産の購入はお勧めしません。他の事業も経営していて賃貸業とは別のところで安定した収入が見込めるなどの条件がない限り、購入の決断はリスキーであると判断することになるでしょう。
現在所有している不動産がワケありなら適切な解消法を提示してくれる、そしてこれから不動産を購入したいのであれば、どの程度のリスクがあるのかを考慮してアドバイスをくれる、このような税理士であれば、依頼するに値するのではないでしょうか。