問題意識のある不動産については、まず評価を実施
財産の棚卸しを事前にしておくことのメリットは大きく3つあります。
まず1つ目は前回の記事でお伝えした通り、問題となる不動産を発見し、事前の対策が可能になるということです。
「いつか処分しようと思っていた不動産があるのだけれど、そのままにしてあった」というように、問題意識はあったものの、時間に追われていつの間にかその対応を後回しにしてしまっていた場合にも、対策の必要性を再認識するよいきっかけとなります。
何らかの対策を講じるべき不動産と言えば、やはり相続税評価額の高い土地、収益性の低い不動産、共有で権利を有している不動産などが筆頭ですが、それに加えて、借地権者と今後どうするかを話し合わなければならない貸宅地、使い道に窮している山林や遊休地、誰も使用していない別荘地などが候補として挙げられます。
こういった対策すべき不動産でも、評価をしないことにはどのような対策を講じるべきかが決められませんので、まずは専門家の手を借りることになります。
そうであれば、そのままその専門家にどうすればいいかを相談して、そのタイミングで売却なり、整備なりを進めていくほうが都合がいいでしょう。一度問題を先送りにしてしまうと、また次にいつ行動できるかわからなくなってしまいます。
「家族が知らない所有不動産」はトラブルの原因に
2つ目のメリットは、申告漏れがなくなることです。
財産の棚卸しは、相続人だけで行うには大変な苦労が伴います。家族には何も言わずに購入している不動産や、先祖代々持ち続けているものであえて子に伝えていない不動産があった場合、もしその存在が相続税の申告期限ギリギリで発覚すれば、何もできぬまま相続財産として課税対象になってしまいます。
申告期限前に発覚するのはまだいいのですが、申告期限後に存在が発覚するようなことになると、また遺産分割協議のやり直し、といった事態が起こります。
土地や建物などの不動産の場合、固定資産税や都市計画税の納付書、賃貸借契約書がどこかに保管されているとは思いますが、限られた時間の中でその存在を明らかにしていく作業は大変なものです。ましてや、初めから「自宅以外に不動産はない」などと相続人が思い込んでいて頭になかった場合は、そういった書類を探すことすらしないかもしれません。
私も財産の棚卸しを手伝うことがありますが、「実は地方に別荘を持っている」「先祖代々から引き継いだ山林がある」といったことは、資産家には珍しくはありません。確実なのは、やはり本人自ら財産目録などを用意しておいて、その存在を相続人がひと目で把握できるように一元管理しておくことです。
「財産目録」をもとに本格的な相続対策を検討
3つ目のメリットは、相続全体のことを意識するようになることです。
自身の財産目録ができてくれば、「この不動産は長男にあげよう」「次女には賃貸経営は難しいから現金を用意しよう」と、誰に何を相続させるかという財産の承継に対する意識が高まってきます。
相続人ごとに適した財産を考えてあげることができれば、相続時にもめることが少なくなります。また、相続人のことを考えられるようになると、実際に話しておいたほうがよいということがわかってきますし、より多くの財産を残してあげたいと考えるため、節税に対する意識も強くなります。
さらに視野が広がれば、遺言書を作成することになったり、生前贈与を始めたりといった具体的な生前対策にまで行動が広がっていきます。そうなれば問題のない円満な相続は見えてきたも同然です。
このように大きく3つのメリットがある財産の棚卸しですが、人によって状況はさまざまであっても、初めの一歩として無駄になることはありません。
「いつかやろう」などと思わずに、「思い立ったその時に、財産一覧を書いてみる」のです。メモ帳に手書きでもかまいません。それが自身の不動産を知り、問題点を考えることにつながります。