(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

先行CI前月差▲3.9と2ヵ月ぶりの下降、一致CI前月差▲0.7と4ヵ月ぶりの下降

 

9月分一致CI3ヵ月移動平均が上昇、景気判断の「改善」は8ヵ月連続で継続

 

 

 

●9月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲3.9と2ヵ月ぶりの下降になった。速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの全系列が前月差寄与度マイナスになった。

 

●9月分の一致CIは前月差▲0.7と4ヵ月ぶりの下降になった。速報値からデータが利用可能な8系列では、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率、輸出数量指数の3系列が前月差寄与度プラスになり、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の5系列が前月差寄与度マイナスである。一致CIは101.1で、8月分の101.8を下回ったが、101.1を上回る指数水準を探すと22年7月分以前では、コロナ禍前の19年5月(101.9)まで遡ることになる。

 

●最近の一致CIを使った景気の基調判断をみると、21年1月分で「上方への局面変化」に上方修正され、2月分では判断が据え置かれた。3月分で景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に上方修正され、4月分~8月分と「改善」の判断は据え置きになっていたが、9月分では「足踏みを示している」に下方修正され、10月分~22年2月分速報値では「足踏みを示している」の判断が継続となった。しかし、生産・出荷関連データの年間補正などがあった2月分改定値では「改善」に戻るための、「3ヵ月以上連続して、3ヵ月後方移動平均が上昇、かつ当月の前月差の符号がプラス」という条件を満たした。3月分・4月分・5月分・6月分・7月分・8月分でも「改善」の判断が継続となった。

 

●今回9月分でも「改善」の判断が継続となった。一致CIの前月差は下降になったが、3ヵ月後方移動平均の前月差は+0.63上昇した。このため、再び「足踏み」に下方修正になるための「3ヵ月後方移動平均の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1ヵ月、2ヵ月または3ヵ月の累積)が1標準偏差分以上、かつ当月の前月差の符号がマイナス」という条件は満たさなかった。

 

●10月分でも「改善」の判断が継続となる可能性が大きい。一致CIの前月差が下降になるとしても、過去の数字が変わらなければ▲4.0ポイント以上の大幅な下降にならなければ、3ヵ月後方移動平均の前月差のマイナス幅が1標準偏差分に届かないとみられる。

 

 

●9月分の先行DIは27.8%と景気判断の分岐点の50%を下回った。速報値からデータが利用可能な9系列中、新設住宅着工床面積、東証株価指数の2系列がプラス符号に、マネーストック1系列が保合いに、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列がマイナス符号になった。

 

●9月分の一致DIは62.5%と景気判断の分岐点の50%を上回った。速報値からデータが利用可能な8系列中、生産指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率の5系列がプラス符号に、鉱工業生産財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、輸出数量指数の3系列がマイナス符号になった。

 

●11月24日発表予定の9月分景気動向指数・改訂値では、先行CIに新たに実質機械受注(製造業)が加わる。機械受注の発表日は11月16日である。また在庫率関連データが11月15日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。実質機械受注(製造業)の前月差寄与度がマイナスになると予測する。先行DIでの、実質機械受注(製造業)の符号はマイナス符号で加わる可能性が大きいと見た。その場合、残りの符号が不変とすれば、先行DIは速報値の27.8%から25.0%に下方修正されると予測する。

 

●9月分景気動向指数・改訂値で、一致CIに労働投入量指数が加わる。労働投入量指数は、雇用者数(非農林業)と総実労働時間指数(調査産業計)の2つの系列を掛け合わせて作られている。内訳をみると、雇用者数(非農林業)は労働力調査のデータで前月比+0.3%の増加であることが判明している。一方、毎月勤労統計・速報値の総実労働時間指数(調査産業計)は前月比+0.1%の増加である。したがって労働投入量指数は前月比増加であろう。労働投入量指数の前月差寄与度は現状では+0.05程度になろう。なお、9月分毎月勤労統計・確報値は11月22日に発表されるため、9月の一致CI改定値では確報値が使われる。また、生産指数関連データは11月15日発表の確報値段階で、また商業動態統計関連データは11月15日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。9月分の一致DIは速報値で62.5%だったが、新たに加わる労働投入量指数の符号はマイナス符号になるとみられるため、他の採用系列の符号を不変とすると、改定値は55.6%程度に下方修正されると予測される。

 

●10月分の先行CIの採用系列で速報値からデータが利用可能な9系列中、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列である。日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの2系列が前月差プラス、消費者態度指数、東証株価指数の2系列が前月差マイナスである。

 

●また、10月分の先行DIでは、数値が判明している消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列では、日経商品指数1系列がプラス符号に、消費者態度指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列がマイナス符号になることが判明している。10月分速報値段階の先行DIは11.1%以上66.7%以下になることが確定している。

 

 

(2022年11月8日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年9月分景気動向指数(速報値)』を参照)。

 

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

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