(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

7~9月期実質GDP前期比年率▲1.2%、4四半期ぶりマイナス成長

 

新型コロナウイルス・第7波などの影響で個人消費前期比+0.3%と伸び悩み

 

控除項目である輸入が前期比+5.2%の大幅増で、全体を押し下げ


 

 

●7~9月期第1次速報値では、実質GDP成長率は前期比▲0.3%、前期比年率▲1.2%である。4四半期ぶりのマイナス成長になった。また、7~9月期第1次速報値の名目GDP成長率は前期比▲0.5%、前期比年率▲2.0%と4四半期ぶりのマイナス成長である。マイナス成長になったものの、景気は厳しい環境下でも、民需を中心として緩やかに持ち直しているという状況に変わりはないだろう。

 

●22年7~9月期名目GDPの季節調整値は545.93兆円になった。4~6月期は548.64兆円になった。4~6月期第2次速報値では547.47兆円だったので0.2%分上方修正されている。22年7~9月期は直近のボトムだった20年4~6月期の510.94兆円と比較すると35.00兆円高い水準だ。また、コロナ前のピークは今回19年7~9月期(561.48兆円)から19年4~6月期の561.93兆円になったが、それとの比較では、16.00兆円低い水準である。

 

●実質GDPの季節調整値は、22年7~9月期543.62兆円である。4~6月期は545.29兆円になった。新型コロナの感染者が初めて出た四半期である20年1~3月期は543.79兆円で、7~9月期はこの水準に0.18兆円と僅かに届かなかった。コロナ前の19年10~12月期の540.74兆円よりは2.87兆円高いが、コロナ前ピークの19年4~6月期の557.73兆円よりは14.12兆円低い。

 

●ESPフォーキャスト調査11月調査(回答期間:10月26日~11月2日)では、7~9月期の実質GDP成長率の平均予測値は前期比年率+1.21%だった。低い方の8人の予測の平均は前期比年率+0.65%だったが、プラス成長予測だった。実際はこれより低い、前期比年率▲1.2%という想定外のマイナス成長になった。なお、ESPフォーキャスト調査では、10~12月期の実質GDP成長率の平均予測値は前期比年率+2.14%の伸び率を予測している。

 

●7~9月期の実質個人消費が新型コロナウイルスの第7波などの影響で伸び悩み前期比+0.3%の増加にとどまった。実質家計最終消費支出の前期比は+0.3%の増加だった。

 

●実質国内家計最終消費支出の前期比は+0.2%の増加である。その内訳をみると、耐久財の前期比は▲3.5%と2四半期ぶりの減少になった。半耐久財の前期比は+4.7%と2四半期連続の増加になった。非耐久財の前期比は+0.1%と3四半期連続の増加になった。サービスの前期比は+0.3%になり、6四半期連続の増加になった。なお、実質雇用者報酬は前期比▲0.8%と3四半期連続の減少になった。名目雇用者報酬は前期比+0.3%と5四半期連続の増加だが、家計最終消費デフレーター(除く持ち家の帰属家賃及びISFIM)が前期比で大きく伸びたため、実質雇用者報酬は前期比マイナスになった。

 

●実質住宅投資は前期比▲0.4%と5四半期連続の減少になった。

 

●実質設備投資は前期比+1.5%の増加と2四半期連続の増加になった。名目の前期比(季節調整済み)は+2.7%と4四半期連続の増加である。なお、名目の前期比(原数値)は+2.7%の増加である。名目の前年同期比は+8.6%と6四半期連続の増加になった。7~9月期の実質設備投資は堅調だった。

 

●供給サイドの基礎統計の情報に基づいて算出した、7~9月期の名目設備投資の供給側推計値の名目原系列前期比は+12.9%、また供給側推計値の情報を用いた需要側推計値(仮置き値)の名目原系列前期比は+14.2%であると公表された。法人企業統計が出た時に前年同期比が+7.2%程度より高いかどうか比較することで、7~9月期実質GDP成長率・第2次速報値での設備投資予測の参考となろう。

 

●民間在庫変動の実質・前期比寄与度は▲0.1%だった。民間在庫投資の内訳をみると、製品在庫は前期比寄与度+0.1%、流通品在庫は前期比寄与度0.0%であった。また、仮置き値の原材料在庫前期比寄与度は▲0.1%、同じく仮置き値の仕掛品在庫は同▲0.0%だった。

 

●実質政府最終消費支出は前期比+0.0%と3四半期連続の増加になった。また、実質公共投資は前期比+1.2%と2四半期連続の増加になった。公的在庫変動の実質・前期比寄与度は▲0.0%であった。7~9月期の公的需要の前期比寄与度は+0.1%だった。

 

●7~9月期の外需(純輸出)の前期比寄与度は▲0.7%と2四半期ぶりに大幅なマイナス寄与になった。実質輸出は前期比+1.9%と4四半期連続の増加になった。財は前期比+1.3%と4四半期連続の増加になった。サービスは前期比+4.7%と2四半期連続の増加になった。実質輸入の前期比は+5.2%と4四半期連続の増加になった。財に関しては前期比+2.1%と4四半期連続の増加になった。サービスは前期比+17.1%と2四半期ぶりの増加になった。広告で日本企業の海外への支払いが増えたことが影響したようだ。決済時期のずれも影響したようだ。

 

●7~9月期のGDPデフレーターの前年同期比は▲0.5%と7四半期連続の下落になった。一方、国内需要デフレーターの前年同期比は+2.7%と3四半期連続の上昇になった。控除項目の輸入のデフレーターがエネルギー価格の上昇などで前年同期比+31.5%と6四半期連続の2ケタの上昇となった影響が出ている。一方、7~9月期の季節調整済み前期比をみると、GDPデフレーターは▲0.2%、国内需要デフレーターは+0.9%になった。

 

●「令和4年度の内閣府年央試算」の22年度実質GDP成長率・前年度比+2.0%を達成するには、22年度残り2四半期で各々前期比年率+3.2%(前期比+0.79%)が必要である。21年度から22年度へのゲタは+0.4%だ。なお、22年度各四半期が前期比0.0%ずつだと22年度実質GDP成長率・前年度比は+1.4%に、前期比+0.5%ずつだと22年度実質GDP成長率・前年度比は+1.7%になる。

 

 

●12月8日公表予定の7~9月期第2次速報値では、12月1日の法人企業統計の発表を受けて、設備投資や民間在庫変動が改定される。

 

●法人企業統計では民間在庫変動の伸び率は名目の前年同期比で発表される。GDPの第1次速報値では民間在庫変動・名目原数値・前年同期比寄与度は+0.2%であった。この内訳に関しては、雰囲気しか教えてもらえないが、4項目中プラス寄与は3項目で、大きな方から製品在庫、流通在庫、仕掛品在庫の順になっている。原材料在庫だけがマイナス寄与であるということだ。

 

(2022年11月15日現在)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年7~9月期実質GDP(第1次速報値)について』を参照)。

 

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

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