(※写真はイメージです/PIXTA)

北朝鮮が日本に電磁パルス攻撃をしかけたタイミングで、中国が台湾に侵攻する恐れがあります。すでにそのリスクは高まっているのかもしれません。その最悪のシナリオはどのように行われるのでしょうか。元・陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏が著書『日本はすでに戦時下にある すべての領域が戦場になる「全領域戦」のリアル』(ワニプラス)で解説します。

台湾を攻撃する唯一の攻撃オプション

■中国は米国の空母打撃群に対しEMP攻撃をおこなう

 

このシナリオでは、中国は台湾の救助のために航行する米国の空母打撃群に対してEMP攻撃をおこなう。

 

中国共産党は、台湾による公式的な独立宣言や「統一は絶対認めない」という声明は、戦争の原因になると警告している。中国は、長年にわたり台湾とその周辺の島々にミサイルと砲弾を発射して、台湾の事実上の独立に対する中国当局の強い阻止の姿勢を示してきた。

 

台湾は、中国にとっての地政学的価値が非常に高く、中国が台湾を占領すると、南シナ海と東シナ海が中国の海になる。そうなれば、中国は南シナ海、東シナ海、そして第一列島線を越えて太平洋方面に空軍と海軍を派遣するであろう。これは、中国の防衛境界線を太平洋方向に遠く押し出すことになり、台湾は周辺地域を支配する不沈空母となるであろう。

 

また、台湾は欧州と中東から日本、韓国、オーストラリア、南北アメリカへの重要な海上貿易と石油供給ルートを妨害する拠点となる。

 

中国は、台湾と対面する本土にミサイル、空軍、地上軍、海軍を集結させ、侵攻作戦と模擬した訓練を実施している。大多数の軍事アナリストは、空軍を含む台湾の武力がある程度強いため、中国が台湾海峡を越えた本格攻撃をおこなうためには、最初に台湾の防衛力を削減することが重要であると主張している。

 

その意味で、EMPは、米国の空母と台湾に中国が勝つための鍵である。例えば、上海共産党中央委員会の公式新聞は、現代の空母の弱点を次のように報じている。
 


①艦隊は大きな目標であり、衛星が偵察して位置を特定し、ミサイルで飽和攻撃(防御側の対抗手段を上回る多数のミサイルで攻撃すること)をおこなうのは簡単だ。

 

②空母機動艦隊のアキレス腱は高度なデジタル化であり、中枢神経系として電子機器に大きく依存している。

 

これらふたつの特性から、EMP攻撃という戦術を採用することになるが、EMPは以下の特性を備えている。


 
①爆発によって引き起こされる強いEMPは、重要な集積回路とチップをすべて破壊する可能性がある。したがって、空母とその周りの艦艇、艦艇に搭載されたミサイルと航空機のレーダーや通信を麻痺させる。

 

②破壊と効果的な影響の範囲は広く、数十㎞に達する。

 

③電子機器などは外見上の被害がないが、損傷している。

 

④EMP爆弾は、空母に命中する必要はなく、空母の周囲数十㎞以内で爆発すればいい。EMP爆弾が首尾よく爆発する限り、空母は麻痺する。

 

⑤空母の中枢神経系が麻痺すれば、質的に劣った艦艇や航空機でも空母を目標として狙うことができ、相互の戦闘力のバランスを根底から変えることができる。EMP爆弾を所有することで、空母艦隊を完全に破壊するための条件と、米軍に対する勝利をおさめる条件が提供される。

 

「中国の電磁パルス攻撃と防衛」と題された台湾国防大学での説明会において、「中国は、米国でスパイを使い、ロシアの技術コンサルタントを雇い、爆縮技術を使用したミニ爆弾の製造に成功した。解放軍はキロトン級のEMP爆弾を配備している。EMP攻撃シナリオは、戦争の最初の麻痺打撃をおこない、解放軍が台湾を攻撃する道を開くための唯一の攻撃オプションである」


と報告された。

 

出典)渡部悦和著『日本はすでに戦時下にある すべての領域が戦場になる「全領域戦」のリアル』(ワニプラス)より。
出典)渡部悦和著『日本はすでに戦時下にある すべての領域が戦場になる「全領域戦」のリアル』(ワニプラス)より。

 

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本連載は渡部悦和氏の著書『日本はすでに戦時下にある すべての領域が戦場になる「全領域戦」のリアル』(ワニプラス)より一部を抜粋し、再編集したものです。

日本はすでに戦時下にある

日本はすでに戦時下にある

渡部 悦和

ワニブックス

中国、ロシア、北朝鮮といった民主主義陣営の国家と対立する独愛的な国家に囲まれる日本の安全保障をめぐる状況は、かつてないほどに厳しいものになっている。 そして、日本人が平和だと思っている今この時点でも、この国では…

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