相続がこじれる原因になりやすい不動産
地主であれば、いくつもの土地を所有していることが多いと思います。場所はどこか、市場価格はどのくらいか、固定資産税はいくらか、利益率はどの程度か、このくらいのことであれば、皆さんも把握しているかもしれません。
それでは、相続税評価額はいくらか、売却ができるよう土地の境界などが整備されているか、借地人は買い取る気はあるのか、などはいかがでしょうか。
これまでの記事で述べた通り、不動産は「分割しにくい」「相続税が思った以上に高くなることがある」などの理由があるために、何らかの対策を講じておく必要があります。
しかし、自身の持つ不動産のことをよく知らなければ、対策が必要かどうかもわからない状態にいることになるのです。
つまり、相続人に財産を引き継ぐ前に、こじれる火種を抱えていないかどうか、一度見直しておく必要があるということです。いわゆる財産の棚卸しをしておくのです。自身の不動産について詳細を把握しておけば、少なからず相続対策へと意識が傾くはずです。
起こり得る問題をできる限り「予測」して対策を講じる
例えば、「市場価値は低いのに相続税評価額が高い土地」であれば、もしそれが事前の調査によってあらかじめわかっていたら、「相続人のためにも、どうにかしておかなければならない」という気持ちになるはずです。
「収益性の低い不動産」であることがわかっていれば、その不動産を見限ることが相続財産の流出を防ぎ、より多くの財産を相続人に残すことにつながることがわかるはずです。
また、不動産が自宅だけで、自宅を相続しない相続人に、相続させる現預金もない状態だとすれば、相続時に「不動産の共有状態」になってしまうことを防ぐために、あらかじめ相続する財産がないことを伝え、相続人を説得しておかなければいけませんし、売却して現金に換え分割するとしても、売却したことで相続人が居住地に困らないようにするなどの準備が必要であることがわかってきます。
自身の不動産のことを知っていれば、相続時にどのような問題が起きそうかということが大まかに見えてくるのです。
しかし、いまだに相続時にはいろいろなところで問題が発生している事実を見聞きすると、この財産の棚卸しがまだまだ不十分であり、その必要性と重要性が資産家の人たちに浸透していないということを実感します。