【糖尿病】むしろ血糖値が上がることも…!? 「糖質制限」のワナ(総合内科専門医が解説) (※写真はイメージです/PIXTA)

総合内科専門医・團茂樹氏(宇部内科小児科医院 院長)が「適正糖質」について解説します。

 

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<糖尿病の方へ>

●糖質制限ではなく適正糖質を心掛けましょう。

●糖尿病の人はできるだけ多くタンパク質を摂って血糖値を下げ、筋肉をつけましょう。

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糖尿病の大半を占めるのは「2型」だが…

一般的な糖尿病の分類としては1型、2型糖尿病とされています。完全なインスリン分泌障害で、インスリン注射が避けられないタイプは1型です。大多数を占めるのが2型糖尿病です。

 

私は自著の中で、2型糖尿病を以下の3タイプに分けることを提唱しています。

 

①クラシカル糖尿病…慢性的な主食における糖質過剰摂取が原因で、内臓脂肪過剰を伴っているタイプ

 

②間食型糖尿病…主食の糖質はきちんと適量であるにもかかわらず、甘いものやジュースなどの間食により食後血糖スパイクを繰り返しているタイプ

 

③粗食型糖尿病…主食においてカロリーはむしろ控えているにも拘らず、ほとんどが炭水化物のみ(たとえば、ざる蕎麦、そうめん、塩おむすび、おかゆだけなどで済ませてしまう)。それも、これらの食事の性質上、短時間摂取(早食い)になるために食後血糖スパイクを引き起こしているタイプ

 

「①クラシカル糖尿病」については、説明の必要はないと思います。

 

「②間食型糖尿病」については、更に

a)食後のデザートタイプ

b)3時のおやつタイプ

と分けて考えますが、「a)食後のデザートタイプ」のほうが良くないのは想像にかたくありませんね。ただし一口に「食後のデザート」と言っても、外食などゆったりとした時間の流れで食べるデザートであれば、一概には悪いわけではありません。一方、自宅でせかせかと、習慣のように一気に食べるデザートは要注意です。

 

「③粗食型糖尿病」は本稿のメインテーマの一つです。

粗食型糖尿病に要注意。食後高血糖を防ぐには?

別稿でも書きましたが、炭水化物中心の粗食はダメです。

 

a)ご飯の量が同じなら、「白米だけ」食べるよりは牛丼のほうが血糖値は下がります(図表1・2)。

 

赤線が「ご飯だけ」食べた場合の血糖値推移、青線が「ご飯+肉(つまり牛丼)」を食べた場合の血糖値推移。 出典:Glycative Stress Research 2016; 3 (4): 210-221
[図表1]牛丼摂取後の血糖値推移 赤線が「ご飯だけ」食べた場合の血糖値推移、青線が「ご飯+肉(つまり牛丼)」を食べた場合の血糖値推移。
出典:Glycative Stress Research 2016; 3 (4): 210-221

 

画像:いらすとや
[図表2]ご飯より牛丼が◎ 画像:いらすとや

 

b)寿司も牛丼と同様です。恐らく寿司10貫くらいがご飯1膳にあたるでしょうが、白米単独で食べる場合に比べ、寿司10貫のほうが寿司ネタの影響で血糖値は断然下がります(図表3)。当然、おまかせの刺身などにブドウ糖は含まれません。食べるスピードがゆっくりなら、なおさら食後過血糖は起こりません。

 

寿司と一緒にビール1本(350cc)かつ日本酒2合と多めに飲んだとしても、アルコールのブドウ糖換算は、ビール(350cc)で7g、さらに酒2合で6g。ちなみにワイン、シャンパン、焼酎にはブドウ糖はほぼ含まれません。これくらいなら、糖尿病がある方でも、コントロール良好であれば血糖急上昇は起こりません。心配すべきはコストだけです。

 

画像:いらすとや
[図表3]ご飯よりゆっくり食べる寿司が◎ 画像:いらすとや

 

c)蕎麦やうどんなどの一気に食べがちな食材は、卵や焼き鳥などと一緒に摂るとなお良いでしょう(図表4)。

 

[図表4]ざるそばだけより、ざるそば+卵焼き+焼き鳥が◎ 画像:いらすとや

 

d)おにぎりも一気食いしがちなのでオススメしませんが、食べるのであれば、明太子や肉などが入っているほうがより良いです。

 

画像:いらすとや
[図表5]塩むすびより明太子や肉のおにぎりが◎ 画像:いらすとや

 

e)コロッケをご飯のおかずにするのはやめましょう。コロッケよりはメンチカツ、メンチカツならハンバーグだけ、といった感じが良いです。

 

画像:いらすとや
[図表6]コロッケよりはメンチカツ、メンチカツよりはハンバーグが◎ 画像:いらすとや

 

とにかく粗食にならないように注意して、タンパク質が豊富なおかずを一品でも多く摂り、美味しく食べて血糖値を下げましょう。これは筋肉のためにも大切です。

 

本稿では詳述しませんが、粗食な炭水化物だけよりも、タンパク質などを加えると、カロリーは増えても血糖値に影響するブドウ糖換算量は低下することがわかっています。

 

糖質の摂りすぎは良くないですが、制限するというマイナス思考よりも、タンパク質や脂肪もしっかり摂ってしっかり血糖コントロールするというプラス思考のほうがより簡単で取り入れやすいと考えます。

むしろ血糖値が上がることも…極端な糖質制限の弊害

糖質制限に関しては、ストイックに減らしすぎると思わぬ弊害が生じます。本稿では、参考までに一つ極端な実例を挙げます。糖質制限によって「体重は確実に減っているが、生理が止まった」「筋肉が落ちた」などはよく耳にしますが、日頃から糖質制限を厳しくしすぎている人が、強度の高いレジスタンス運動(筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動。いわゆる筋トレ)をするとどうなるでしょう?

 

これは私の糖尿病患者さんで経験した例です。彼は常日頃から極端な糖質制限を課しており、週に一度だけスポーツクラブで厳しい筋肉トレーニングもしていたようです。その患者さんが随分久しぶりに当院を受診したとき、彼は早朝に豆乳だけ飲んで、スポーツクラブでトレーニングをした後でした。もちろん、トレーニング後は何も食べていなかったようです。

 

さっそく当院で血糖検査をしたところ、血糖は急上昇して300mg/dl近くになっていました。当然、彼は不思議に思いました。ほぼ何も摂っていないにも拘わらず、なぜ血糖値はそんなに上がってしまったのでしょう?

 

答えは簡単です。運動すると交感神経が刺激され、それだけで血糖値は上がります。ただし、このケースは単にそれだけではありません。すべてが極端だったのです。糖質制限も、当日のレジスタンス運動も。

 

理屈はこうです。日頃の厳しい糖質制限によって、ブドウ糖は常にやや枯渇傾向にあります。そんななか急遽激しいレジスタンス運動をしたために、その分ブドウ糖が必要になりました。そこで筋肉や肝臓などの臓器にあるグリコーゲンを急遽分解し、ブドウ糖を捻出しました。なけなしの貯金を急遽解約したわけです。体にとっては非常事態ですから、なだらかな血糖上昇とはなりませんでした。

 

彼は、思ったほど筋肉がつかないのは頻回に通っていないからかも?と思っていたそうです。ぞっとしますよね。これは極端な一例ですが、ストイックな糖質制限が引き起こした弊害です。

最後に:「糖質制限」と「適正糖質」の決定的差

糖質制限論者は、糖質の種類を分けないで論じています。炭水化物とは「糖質+食物繊維」であり、糖質とは「ブドウ糖+果糖+ガラクトース」です。このうち血糖値に影響するのは、ブドウ糖と果糖です。本稿では説明を割愛しますが、血糖値に直接影響するのはブドウ糖、果糖は間接的に影響すると理解しておいてください。

 

私の提唱する適正糖質は、血糖値への影響を考えてブドウ糖換算量で求めています。特にタンパク質の血糖に関する効果や、糖質でも、果糖、ガラクトースなどの糖質のことも考え合わせるとストイックな糖質制限は必要ないといえます。もちろん糖質過剰摂取は気をつけてください。

 

 

團 茂樹(だん しげき)

宇部内科小児科医院 院長

総合内科専門医

 

日本大学医学部附属病院で血液のガン治療に従事した後、自治医科大学へ国内留学、基礎研究分野の経験を経て大学病院や地方病院に勤務。その後、遺伝子研究の本場・カナダオンタリオ州立ガンセンターで遺伝子生物学に関する基礎研究に従事。帰国後、那須中央病院の内科部長を経て、宇部内科小児科医院副院長に就任。その後3年間、千代田漢方クリニック院長を兼任。

 

以来16年余り漢方治療を導入。2010年から現職。2015年に総合内科専門医を取得。総合臨床医として様々な症例に携わるとともに、臨床で培った経験や医療情報の中から選りすぐったアドバイスを行うダイエット法には定評がある。

 

著書に『糖尿病は炭水化物コントロールでよくなる』(2022年6月刊行、合同フォレスト)がある。

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    宇部内科小児科医院 院長
    総合内科専門医 

    日本大学医学部附属病院にて、悪性リンパ腫・白血病など血液のガン治療に従事する。その後志願し血液学の中心であった自治医科大学へ国内留学、基礎研究分野の経験を経て大学病院や地方病院での勤務を経験する。

    勤務医として将来の目標を模索していた頃に偶然に再会した前自治医科大学長の高久文麿教授の推薦で、遺伝子研究の本場であるカナダオンタリオ州立ガンセンターで遺伝子生物学に関する基礎研究に従事する。帰国後、那須中央病院の内科部長を経て、宇部内科小児科医院副院長に就任。その後3年間、千代田漢方クリニック院長を兼任。

    以来16年余り漢方治療を取り入れている。2010年に宇部内科小児科医院院長(現職)に就任。2015年に総合内科専門医を取得。

    内科領域にとどまらず、総合臨床医として様々な症例に携わるとともに、様々な医療情報を発信。

    特に、内科臨床の見地に立ち、臨床で培った経験や医療情報の中から選りすぐったアドバイスを行うダイエット法には定評がある。

    著書に『糖尿病は炭水化物コントロールでよくなる』(2022年6月刊行、合同フォレスト)がある。

    【⇒宇部内科小児科医院HP(https://www.ube-clinic.jp/)】

    著者紹介

    連載糖尿病、高血圧、健康寿命…総合内科専門医が教える「秘訣」

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