(※写真はイメージです/PIXTA)

測るたびに血圧が違う、病院で測ると高い、何回も測ると低くなる…。血圧をコントロールしようにも、どの数値が正確なのか迷う方も少なくないでしょう。より正確な数値を知るには、どうすればよいのか。総合内科専門医・團茂樹氏(宇部内科小児科医院 院長)が、現時点で推奨する「測り方」を解説します。

血圧は常に変動している

どなたも血圧は常に変動しています。自分の血圧の数字をすぐ明確に答えられる人は、かえってあまり血圧測定をしたことがない人か、年に1〜2回受ける検診の値を後生大事に覚えている方かもしれません。

 

血圧は季節、時間帯、気分の問題、寝不足など種々の影響を受けて変化します。

 

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<血圧に影響するものの例>

a)季節で言うと、春夏は低い傾向があり、秋冬にかけて高くなる傾向があります。

 

b)1日で言うと、職業にもよりますが、起床前後の4時間は高い人が多いようです。また、就寝前は多くの方は低くなるようです。

 

c)焦って測ったり、イライラしていたりするときは高めになります。

 

d)「白衣高血圧」と言って、病院で測るとどうしても高くなる方も少なからずいらっしゃいます。かくいう私も、歯科治療を受ける際に普段より随分と高くなった経験があります。

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血圧は血糖値の変動と同様に、あまり日内変動差が大きくないほうがいいと言われています。

 

早朝はやや高く就寝前はやや低くなる傾向があるということは、大勢の方を対象にした過去の24時間持続血圧測定大規模スタディの結果で明らかになっています。ただし普段、早朝や夜は、入院していない限り誰も測ってくれません。血圧測定は自己責任なのです(※注:ついでに言うと、入院中の場合、痛みなどなく落ち着いているときは多くの方は低めになります。日常の生活のストレスもなく、ある種“別世界”だからです。退院後の日常のストレス下における血圧管理が重要です)。

現時点で筆者が勧める測り方

■「手首」ではなく「上腕」で測定

上腕で測定することは当然であり、手首の測定は勧めていません。

 

私は患者さんに、自宅でゆっくり深呼吸を数回して、落ち着いてから測るように指導しています。左右どちらかで測定し、その値が140以上と高く出て気になるときは、反対側の腕に替えてもう一度測るように指導しています。どちらも140以上と高くても、その時点で特に症状がなければ、ただ測定値を記録するに留めておき気にしないようにいいます。

 

2週間を目安に測定してもらい、その平均値が140以上であれば処方を変更します。

 

■右腕と左腕とで血圧に差があるときは?

左右の腕で血圧に差が出るというのは、現実的にはあまり多くありません。右腕か左腕かではなく、意外と「最初に測るほう」の腕が高い傾向にあるようです。しかし何人か経験しますが、左右差がある人は血圧が高いほうの腕で測るようにしてもらいます。

 

■病院で測ると高くなる場合は?

まず自宅に帰ったらすぐ測るように指導します。家では低く戻ることがほとんどです。

 

ついでに言うと、家では130/80くらいの人が、診察時では上(収縮期)と下(拡張期)がともに並行移動して高くなるとき(たとえば180/120になるなど)は、むしろ血管の弾力性があるので気にしないようにいいます。これは「ふいごの原理」によるものですが、説明が複雑になるのでここでは気にしなくてかまいません。高齢者の方は血管の弾力性が落ちることが多く、下の血圧(拡張時血圧)は、上の血圧(収縮期血圧)と比べてかなり低い人がいます。このときは上の値を目安に治療します。

高血圧ガイドラインの決め方とその限界

複数の高血圧専門医指導の下、全国の指定病院で患者さんの血圧測定を行い、各種疾患(脳梗塞、心筋梗塞、腎臓病など多岐にわたる)との膨大な関連のデータと比較して基準血圧値を決めています。

 

高血圧ガイドラインについて私がいつも気にしているのは、患者さんの早朝の自宅血圧(患者さん自身が自宅で測った血圧)が入っていない点です。有識者の先生方も早朝高血圧が大事だとは発表されています。それでもなぜ早朝自宅血圧が含まれていないのかというと、医療関係者の管理下で測った数値ではないから統計には入れられない、という理由からです。

 

本来なら、指定の血圧測定器を渡した上で患者さんに測定してもらい、その数値を統計に入れるべきだと考えます。測定値記録をしっかり残せるようにしておけば問題ないことだと思います。

 

ちなみに自宅血圧は、医療機関で測定した血圧より5を引いた値を推奨しています。なぜなら医療機関での測定は、血圧を高くする「緊張」という因子があるので、自宅血圧は緊張がない分5を減らした値になるという考えです。

 

【図表】は高血圧治療ガイドラインです。

 

画像出典:公益財団法人. 「日本心臓財団高血圧治療ガイドライン・エッセンス」(https://www.jhf.or.jp/pro/a&s_info/guideline/post_3.html)
【図表】高血圧治療ガイドライン 画像出典:公益財団法人. 「日本心臓財団高血圧治療ガイドライン・エッセンス」(https://www.jhf.or.jp/pro/a&s_info/guideline/post_3.html)

 

ここには早朝高血圧とかの時間的因子はありません。かつ変動という因子が抜け落ちています。まるで糖尿病で血糖値コントロールの平均値を見るHbA1cだけで判定しているようなものです。

 

血圧は色んな因子で変動しますが、一応、医療機関でゆっくり落ち着いて測定した値を基準にせざるを得ない側面はあります。

最近注目の「中心血圧」

血圧は腕で測定する上腕血圧が一般的ですが、最近は中心血圧が言われつつあります。中心血圧とは心臓に近い大動脈(大動脈起始部)で測定される血圧です。

 

中心血圧は上腕血圧とは異なる値を示すことがわかっており、専門家の間では、血圧が臓器へ与える負担を見るためには、上腕血圧よりも中心血圧の測定のほうが適していると考えられています。

 

また、中心血圧が高いと、心臓病や高血圧によって悪化する病気のリスクが高まることが報告されています。

中心血圧を「手首」で簡単に測れる時代に

これまで中心血圧を測定するには心臓カテーテル検査を行う必要がありましたが、現在は手首で簡単に測定できる機器が出てきています。

 

価格の問題があり実用化にはもう少し時間がかかるかもしれませんが、腕時計に組み込まれて中心血圧が安価で測れるようになる時代がじきに到来するでしょう。

血圧測定の未来 ~腕時計式中心血圧測定器への期待

近い将来、血圧の概念は大きく変わるでしょう。血圧は“点”で見る時代から“線”で見る時代となり、血圧に関する種々の要因に解明に繋がることが期待されます。

 

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<未来の血圧測定は…

1)血圧変動を捉える。

将来的には、リストウォッチのようなもので日中の変動を見ながら血圧をコントロールする時代になるのでしょう。現在は手首での計測は勧められませんが、新しい器具を使い、手首でしっかりした計測ができる時代はすぐそこに来ています。

 

2)中心血圧で評価する。

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團 茂樹(だん しげき)

宇部内科小児科医院 院長

総合内科専門医

 

日本大学医学部附属病院で血液のガン治療に従事した後、自治医科大学へ国内留学、基礎研究分野の経験を経て大学病院や地方病院に勤務。その後、遺伝子研究の本場・カナダオンタリオ州立ガンセンターで遺伝子生物学に関する基礎研究に従事。帰国後、那須中央病院の内科部長を経て、宇部内科小児科医院副院長に就任。その後3年間、千代田漢方クリニック院長を兼任。

 

以来16年余り漢方治療を導入。2010年から現職。2015年に総合内科専門医を取得。総合臨床医として様々な症例に携わるとともに、臨床で培った経験や医療情報の中から選りすぐったアドバイスを行うダイエット法には定評がある。

 

著書に『糖尿病は炭水化物コントロールでよくなる』(2022年6月刊行、合同フォレスト)がある。

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