進化によって得られた「肩関節の自由」だったが…
人類は二足歩行によって体重を両腕で支持する必要がなくなった結果、現在では自由になった腕を使ってスポーツを楽しめるようになりました。
よって、人間の両腕は立つことによって体幹に平行となり、腕は肩にぶら下がっている状態となりました。つまり、体重を支持していた肩が自由になった代償として、腕の重さ(体重の6~8%)が肩に常にかかるようになったのです。
そのため、肩甲骨も対応して進化をしてきました。そこで今回は、肩甲骨の進化を中心に解説していきます。
魚類では腹側にあった肩甲骨、人類では背面に移動した
魚の胸ヒレの基部にあった小さな肩甲骨は、泳ぐための補助具でしかありませんでした。しかし、進化によって陸上生活をするようになると、その機能は大きく変わることになります。
まず、水中から上がり陸上生活に変わると浮力がなくなるので、体重を支えて移動するために胸ヒレは腕に進化するとともに、肩甲骨も腕を支持できるように進化していきました。
次に両性類へと進化を遂げると、体幹で体重を支持しながら、腕を使って漕ぐように移動していましたが、さらに進化した爬虫類の姿では、腕で体幹を浮かせての早い移動が可能となりました。とはいえ、この時点での腕は肘で曲がっているため、身体を支えるにはあまり効率のいい姿ではありませんでした。
しかし、哺乳類に進化すると、腕の肘は伸展し、身体を支えるのに最適な形になり、走ったり駆けたりすることが可能となりました。
これに伴い、哺乳類は肩甲骨も腕にかかる体重を、胸部で確実に支持、安定させるために垂直化し、腹側にあった肩甲骨は体幹の側面に移動しました。
そして、二足歩行になった人間は、腕で体重を支える必要がなくなった代わりに、狩りで槍や石を遠くに投げるための「上腕骨が頭の後ろにいく」投球フォームによって、肩甲骨を体の背面に移動しました。
魚類では腹側にあった肩甲骨は、人間では背面に移動したのです。まさに「腹を背に変える」大進化をしたわけですね。
この両生類→爬虫類→哺乳類→人間までの歩行の進化は、赤ちゃんの成長過程に再現されています。つまり、ずりずり(腹で支えて手で漕ぐ)、はいはい(手で体重を支えるが、肘が屈曲)、四つんばい(肘がしっかり伸びて体重を支えている)、そして二足歩行になっていくわけです。