何より重要になる「費用対効果」の視点
再三申し上げますが、アパート事業は、利益=(売却額−取得額)+(収入−支出)を最大化することが目的です。リフォームに関しても、この考え方を適用しなければ事業はうまくいきません。費用対効果(=「利回り」という考え方)が重要なのです。
その費用をかけること(支出をすること)でどれだけの賃料を取れるか?、賃料下落をどれだけ食い止められるか?、売却価格にどれだけ反映されるか?ということです。
アパート事業は長期にわたりますので、リフォームについても投資基準を持って行う場合と、持たないで行う場合とではその運用結果に大きな差が出てきます。
クロス一つとっても、同じようなデザインで価格の差は倍ほどありますし、その気になればいくらでも高価なものが存在します。
つまり、賃料上昇分を利回り計算し、物件購入(建築)時の利回りより高ければ施工メリットは高いと判断できます。
例えば、和室から洋室への変更工事を行うことで3000円の賃料下落を抑えることができれば、下の図の計算式の通りメリットがあると考えてよいでしょう。
このように、リフォーム(アップグレード工事)にも「利回り」という考え方を取り入れることで、やるべきものと、やる必要のないものの判断が明確になります。物件の管理を管理会社に任せている方も多いでしょう。
「出口戦略」を含めてリフォームを検討
費用対効果(=「利回り」という考え方)の認識がない管理会社による不必要なリフォーム工事の提案を受け入れてしまうことは、オーナーさんの利益を損ないますので注意が必要です。筆者の会社でリフォームを行う場合、次の三つを注意しています。
①オーナーの運用方針に沿ったリフォーム内容にする
PM会社の立ち位置はあくまでオーナーさんの代理という立場になります。そのため、リフォームに関しても、オーナーさんの運用方針、現在の入居率、毎月の返済額、確定申告の内容などを理解した上で、リフォーム内容を提案、実施します。
例えば、短期保有なのか長期保有なのかで、リフォーム内容は違ってきます。短期保有で近いうちに売却を予定している物件であれば、賃料の最大化を目的とするリフォーム内容になります。なぜなら、賃料総額に応じて売却価格が決まるからです。ただし、売却想定利回りを下回るリフォームは控える必要があります。
長期保有の場合は、コストを最小限に抑えて、入居希望者の申し込みが入るラインを判断し、リフォームを行います。
キッチンを例にお話ししましょう。
短期保有では、賃料アップが目的となるため、売却想定利回りを「リフォーム利回り」が上回るのであれば、多少費用がかかってもシステムキッチンを導入します。長期保有では、著しく賃料が下がらない限り既存のキッチンを生かし、クリーニング、またはカッティングシートなどで済ませます。
このように、オーナーさんの運用方針を明確に理解してリフォームを行うのと、理解せずに行うのとでは大きな違いが出てしまいます。筆者の会社では、物件の購入から管理、さらには売却(出口戦略)までをサポートさせていただいているため、オーナーさんのポートフォリオ(資産一覧)を把握しており、帳簿上の黒字が多くなる年には大規模修繕を提案するなど、経費計上のタイミングもコンサルティングしております。
つい先日も複数棟の物件をご所有のオーナーさんに外壁・屋上防水塗装の工事をご提案し、300万円程の節税のお手伝いをさせていただきました。
②賃貸仲介の営業マンからの意見を取り入れる
的確なリーシングを行うためには、仲介の営業マンからの情報の吸い上げが重要になるのは先述した通りです。
リーシングにおいて重要な位置を占める部屋のリフォームについても全く同様です。現場の仲介の営業マンの意見を取り入れることは必須になります。オーナーサイドの勝手な思い込みでリフォームしてしまえば、入居者が決まらないばかりか無駄な支出にもなってしまいます。
ではどのように営業マンの意見をリフォームに反映させればよいのかの詳細は次項で述べます。
③コスト意識を常に持つ
繰り返しになりますが、PM会社はあくまでもオーナーさんの代理人です。そのため、リフォーム会社の選定はもちろんですが、工事内容、部材単価などすべてに対してコスト意識を持つことが重要になります。
リフォーム会社の選定であれば、工事内容、工期の両面でコスト意識を持っている会社にお任せすることが前提条件になります。コスト意識がなければ、交換する必要のないものを交換したり、不必要な工事も追加されたりしてしまいます。また、工期が長くなってしまい機会損失が大きくなります。
このように業者選定においても、コスト意識がなければオーナーさんの望む成果を出すことはできません。管理会社として、工事内容、各部材単価等も工事業者に指示できる知識が求められます。工事業者は入居希望者の要望や、オーナーさんの意向をすべて理解しているわけではないので、それらを踏まえて指示を出すことが重要になります。