前回は、賃貸アパートの利回りを高める「正しいリフォーム」の進め方を紹介しました。今回は、アパート経営で気をつけたい「自己流リフォーム」の落とし穴について見ていきます。

リフォーム前に必ず把握したい「入居希望者のニーズ」

リフォームは、お客様(入居希望者)のニーズを聞いてから行うのが非常に重要です。その点で、ニーズを把握しているのはやはり賃貸仲介会社の営業マンであると言えるでしょう。

 

彼らは常に入居希望者に接しています。どんな賃料で、どんな間取りで、どんな設備にニーズがあるのかを瞬時に答えてくれます。ライバルになりそうな物件の情報や、直近で決まった物件の情報、対象物件の過去の認知度や評判までもがわかります。

 

賃貸仲介会社の営業マンは情報の塊です。特に成績を上げている営業マンは、そのエリアの全賃貸物件の情報が頭に入っていると言っても過言ではありません。

 

例えば、埼玉県の川越にある賃貸仲介会社の営業マンO氏は、駅周辺はもとより近隣駅の賃貸物件の情報も「一室違わず」現状を把握しています。なぜならO氏は、空き物件の状況、それらの室内の状態を、日々ネットや現地視察などで調査しているからです。ここまで詳しい内容を把握していれば当然、お客様の成約率も高く、入居希望者のニーズについての情報も豊富です。このような営業マンから得た入居希望者のニーズは、一般的な営業マンのそれと比較にならないぐらい的確です。

 

ですので、もし空室が多い物件を管理受託した場合には、まず、敏腕営業マンにヒアリングし、入居希望者のニーズを把握した上で賃料設定・リフォームなどを行いましょう。そうすることで、効率的な入居斡旋が可能となります。

 

ニーズに即していないリフォームでは空室のまま・・・

ここでもう一つ、A氏の事例を挙げます。A氏は、都内に築古の区分所有物件を買いました。しかし前オーナーが犬を6匹飼っていたため室内が大変傷んでいて、そのままでは貸すことができませんでした。

 

何を思ったか、A氏は自らの手でリフォームをする道を選びました。なぜかと言えば、自分の考える理想の賃貸物件に仕上げたかったからです。すべての部屋の壁紙をはがし、漆喰を塗り、床もすべて張り替え、水回り、建具もことごとく交換しました。

 

休みもすべて返上し、朝早くから夜遅くまで作業に費やしました。すべてが完成したときには4カ月の月日が流れていました。

 

当初の募集賃料は相場賃料より5000円増し。A氏は理想の賃貸物件を作ったと自信を持っていましたので、すぐに入居者が決まると自信満々でした。周辺の賃貸仲介会社はすべて回り、広告料を家賃の2カ月分支払うことを伝えました。相場以上の広告料を支払う条件なので案内は数多くありましたが、1カ月経っても決まらない。そこで案内をしてくれた賃貸仲介会社に断られた理由を問い合わせしたところ、残酷な一言が……。

 

「住みづらい」

 

A氏は思ってもみなかったことに、大変ショックを受けました。結局1カ月後に、相場賃料で何とか入居者が見つかりました。何を隠そう、このA氏とは私(太田)のことです。

 

なぜこんな結果になったのか?それは、入居希望者のニーズを無視した、ひとりよがりのリフォームをしてしまったからです。私は契約後、入居希望者を最も多く案内してくれた営業マンにマイナスポイントを挙げてもらいました。

 

●漆喰→汚れやすい(原状回復工事で多額の請求をされる恐れがあるため敬遠された)

●スポットライトのみの照明→暗い

●おしゃれな建具→デザイン優先で使いづらい

●おしゃれな和室→和室の需要がない

 

そのエリアでは、普及品のクロスを張り、全室洋室にすれば相場賃料で簡単に入居者が決まるというのが結論でした。そんなの当たり前じゃないかという声が聞こえてきそうですが、意外と思い当たる節のある方も多いのではないでしょうか。

 

現在空室があるということは、何らかの問題を抱えているはずです。その問題がどこなのかは物件によって一つひとつ異なります。その核となるような有益な情報を誰が持っているのかと言えば、間違いなく賃貸営業マンです。

 

長期の空室が続いている方の中には、問題点を直視せず、先延ばしにしている方もいらっしゃるでしょう。判断が遅れれば機会損失が生まれます。賃貸営業マンに問題点を聞き、素早く改善することが、空室期間を短くする最も有効な手段と言えます。

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    本連載は、2013年7月2日刊行の書籍『改訂版 空室率40%時代を生き抜く!「利益最大化」を実現するアパート経営の方程式』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    本連載は情報の提供及び学習を主な目的としたものであり、著者独自の調査に基づいて執筆されています。実際の投資・経営(管理運営)の成功を保証するものではなく、本連載を参考にしたアパート事業は必ずご自身の責任と判断によって行ってください。本連載の内容に基づいて経営した結果については、著者および幻冬舎グループはいかなる責任も負いかねます。なお、本連載に記載されているデータや法令等は、いずれも執筆当時のものであり、今後、変更されることがあります。

    空室率40%時代を生き抜く!  「利益最大化」を実現する アパート経営の方程式

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    大谷 義武 太田 大作

    幻冬舎メディアコンサルティング

    アパート経営は今までと同じやり方では利益が出ない時代へと状況が大きく変わってきています。歴史上初めての大きな転換期を迎えていると言っても過言ではありません。だからこそ今のうちに、アパート経営を見直し、しっかりと…

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