アメリカさえ抜き去った…中国の脅威的「特許出願数」
さらに、世界知的所有権機関(WIPO)によれば、日本・米国・中国の特許出願数の比較では、中国の躍進が顕著で、日本(30万本)はおろか米国(60万本)さえ抜き去り、140万本に届く勢いである。民間を含む研究開発費の比較も同様な傾向となっている([図表2])。
戦前は中国の魯迅・孫文・周恩来ら、その後活躍する中国の若者が日本で学んだが、今では優秀な若者ほど、米国に留学するようになり、日本は見向きもされなくなってしまった。
国際会議で痛感するのは鉄鋼・自動車・電気電子機器の米国の企業幹部や大学の教授が、中国・韓国・インド人でほとんど占められるようになったことである。
彼らは、留学後もそのまま米国に住みついた。逆説的だが、そのことが米国のものづくり産業を下支えする源泉にもなっている。
競争的研究資金配分および重点主義の弊害
2020年2月19日の日本経済新聞によれば、民間を含む研究開発費の世界首位は米国で5490億ドル(約60兆円)。中国も4960億ドルに達する。日本は1709億ドルで米中の3分の1である。もはや資金力の差は埋めようがない([図表3])。
2004年の国立大学法人化を機に、文部科学省の運営費交付金は毎年約1%ずつ削減され、1兆2415億円から2018年度は1兆971億円と約12%の減少となっている.この削減は研究教育の基盤的経費が15%~18%削減されたことに相当する。
大学運営の基本である教育経費は削減できず、結果的に予算削減のしわ寄せは研究費の大幅な削減となった。この法人化と同時並行で進められたのが、「研究予算の選択と集中」との美名で呼ばれた競争的資金の科研費(科学研究費補助金)であった。
日本には技術を見極める目や、投資の決断力を持つ司令塔が見当たらない。
文科省の立ち居振る舞いも大切だが、文科省の決定権は財務省にある。その財務省には、理工系の本質や、ものづくり技術を支援する人材がいない。
前・国立大学協会会長の山極京大総長と財務省幹部とが激論し、「重点配分主義は流行を追いすぎている」との批判に対して、財務省は全く聞く耳を持たず、「国立大学の運営費一律削減は信念をもってやっている」と発言したのには、びっくりした。