為替レートが長期的に安定する仕組みとは
どの国も2%のインフレ目標を採用する現状は何を意味するのか?
現在は、多くの先進国が2%のインフレ目標に向かって政策を取っています。
以前のように、日本は「インフレ率1%程度」(※)を目指し、他国は「2%のインフレ目標」を採用していると、購買力平価説に基づき、円相場は毎年1%程度円高になることが期待されます。日本国内のモノが海外に比べて年に1%ずつ安くなると期待されるためです。
※2006年3月にインフレ率0~2%前後を中長期的な物価安定の『理解』に;2009年12月に『理解』の中心は1%程度と明確化;2012年2月に1%を『目途』に;2013年1月に2%を『目標』に、それぞれ変更。
他方で、現在は、多くの先進国が2%のインフレ目標に向かって政策を取っています。すると、為替レートは、購買力平価説に基づき、長期に安定することが期待されます。
すなわち、各国が共通したインフレ目標を持ち、目標達成と整合性のある金融政策を実行するということは、各国にとってみると、独立した金融政策を志向し、資本移動の自由も許容した上で、長期の為替レートが安定するということですから、『国際金融のトリレンマ』の克服に近づきます。
そこでは、長期的な期待に基づく為替レートも均衡して貿易や生産の面で安定するような協調のナッシュ均衡が成立しています。
現状として、インフレ率が2%を超えている国は引き締めを行い、インフレ率が0%近傍の日本は金融緩和を続けていることは、この安定の枠組みと整合性があります。そして、物価を安定させる市場メカニズムが為替レートであるわけです。
このほかにも、ドル高を見ず、円安のデメリットだけをことさらに強調する論説や記事が目立ちます。現状の国内政治を見ていればあらためてわかるように、メディアは影響力が大変大きいため、バランスを取って見ていくことが重要だろうと筆者は考えています。
重見 吉徳
フィデリティ投信株式会社
マクロストラテジスト
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