コンテンツの読み込みを待てるのは2秒まで…効率を追求する現代人がネガティブ思考に陥りやすいことが判明

コンテンツの読み込みを待てるのは2秒まで…効率を追求する現代人がネガティブ思考に陥りやすいことが判明
(※写真はイメージです/PIXTA)

「時間がない」「もっと効率化しなければ」…時間の使い方に満足していないすべての方へ。“時間不足を根本から解消し、あなたの有意義な時間を増やす方法”を、ベストセラー作家の鈴木祐氏が著書『YOUR TIME ユア・タイム 4063の科学データで導き出した、あなたの人生を変える最後の時間術』(河出書房新社)で解説します。

現代人に失われつつある「認知の耐性」とは?

同大学が行った実験では、100人の学生を集めたうえで、そのうち半数に短編小説を読むように指示。残りの半数には普通のエッセイを読んでもらったところ、小説を読んだグループのみ「認知の耐性」に改善が見られました。

 

「認知の耐性」とは、明確な答えをすぐ求めずに、あいまいさを放置できる能力のことです。

 

本や映画のエンディングを待てずに先にラストを見てしまったり、ネットで注文した商品が届くまで配送状況を何度も確認したりと、不確かな状況にいらだちを覚えやすい人は「認知の耐性」が低いと言えます。

 

この能力の重要性は複数のテストで確認されており、シンシナティ大学などのレビューでも、「認知の耐性」がない人ほど深い思考ができず、創造的なアイデアを出すのが苦手で、メンタルを病みやすいと報告されています。

 

それもそのはずで、私たちの人生はどんなときでも不確実性に満ち、はっきりした答えが見つかることなどまずありません。それなのに効率や生産性を求め続けてばかりいたら、常にネガティブな感覚に支配されるのは当然でしょう。

良質な文学に触れると「認知の耐性」が改善するワケ

この観点からすれば、小説で「認知の耐性」が上がったのは驚くような結果ではありません。言わずもがな、良質な文学ほど簡単な答えを出さず、読み手に複数の解釈を許す作品が多いはずです。

 

読み手にできるのは、ただキャラクターの思考と行動を受け入れることだけで、カミュの『異邦人』やドストエフスキーの『罪と罰』のように、ときには不快な人物の視点に立つ姿勢すら求められます。

 

そんなテキストを処理するには、文章のディテールを吸収しながらも、すぐには結論を出さずに最後まで読み進めるしかありません。

 

このような脳の働きは、私たちがSNSやニュースサイトで使う情報の処理法とは大きく異なり、それゆえに「認知の耐性」を伸ばす働きを持つのです。

 

ちなみに、実験で使われた小説は20世紀初頭〜半ばの作品がメインで、ボウルズの「遠い木霊」やクラークの「風と雪」など、およそ6,000語の短編が選ばれています。

 

[図表1]に実験で使われた作家名の一部を掲載しました。どのような小説を選ぶかはあなたの好みによりますが、できれば結末がはっきりした娯楽作品よりは、簡単には答えが出せない作品を選んでみてください。

 

[図表1]実験で作品が使われた作家

 

 

鈴木 祐

科学ジャーナリスト

 

本連載は、鈴木祐氏の著書『YOUR TIME ユア・タイム 4063の科学データで導き出した、あなたの人生を変える最後の時間術』(河出書房新社)から一部を抜粋し、再構成したものです。

YOUR TIME ユア・タイム 4063の科学データで導き出した、あなたの人生を変える最後の時間術

YOUR TIME ユア・タイム 4063の科学データで導き出した、あなたの人生を変える最後の時間術

鈴木 祐

河出書房新社

「時間がない」「もっと効率化しなければ」「本当に大切なことに時間が割けない」「気がつけば1日が終わっている」 ……時間の使い方に満足していないすべての方へ。 「時間感覚」を書き換えて、あなたの時間を取り戻せ!…

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