仲介店舗と密接な関係を築けているか?
前回の続きです。募集間口の拡大とあわせて大切なことが三つあります。
一つ目は、マイソクの提供方法の工夫です。空室物件の情報は日々更新されていきますから、定期的に他社仲介店舗に提供しなければなりません。具体的にはメールやファックス、DMを使い、仲介店舗に一斉に送信していきます。当社ではこの作業を1週間ごとに繰り返し行っています。
物件の特性に合わせて送信する対象エリアの選定も行わなければなりません。物件が立地する近隣店舗はもちろん、沿線のターミナル駅周辺の店舗にもアピールします。とくに近年は物件の最寄駅ではなく、ターミナル駅近隣の店舗からの成約も多くなっています。
二つ目は、取引のある仲介店舗の営業マンに電話で直接、空室情報をアピールすることです。マイソクを一方的に送るだけでなく、営業マンに直接伝えることで自社物件を印象づけられます。
そして三つ目は、取引のある仲介店舗に直接訪問する方法です。直接訪問は時間と労力がかかりますが、大変効果的な方法です。筆者自身、基本的にはデータをもとにした分析によって経営戦略を立てることが多いですが、唯一、そのデータを超越するのが直接訪問です。
仲介店舗に足を運ぶことがなぜそれほど効果的なのかといえば、営業マンとの人間関係が醸成できる点でしょう。信頼関係を結ぶ上でのポイントは、営業マンにプライベートの電話番号を教えておくことです。
仲介会社の営業マンは、店舗のカウンターで入居希望者と対峙しているその瞬間が勝負です。
たとえば入居希望者が「あと1000円家賃を下げてくれたら契約します」と言った場合、営業マンはその場で管理会社に連絡を入れ、物件担当者に家賃値下げが可能かどうか確認します。連絡がついて1000円値下げの了承が取れた場合、仲介会社の営業マンは入居希望者にその旨を伝えて成約に持ち込めます。
管理会社の担当者に連絡がつかなかった場合、入居希望者は契約を諦めて他の店舗に足を向けてしまうかもしれません。仲介の現場では、一度取り逃がした顧客がまた店舗に戻ってきてくれるケースはほとんどありません。したがって仲介会社の営業マンにとって、管理会社の物件担当者にすぐ連絡がつくかどうかは重要なのです。
管理会社は土日は休みの会社が多いですが、仲介店舗は土日も営業しています。その土日に管理会社の物件担当者に確認する必要が生じた場合、プライベートの電話番号がわかればすぐ連絡できます。
仲介会社の営業マンに、「この担当者は休みの日でも電話に出てくれる」と思ってもらえるとチャンスです。以降、営業マンはその担当者の物件を優先的に紹介してくれる可能性が高くなるでしょう。
物件担当者も懇意にしている営業マンの期待に応えられるよう、電話対応を含めて誠心誠意の対応を心がけることで、お互いの信頼関係をより強められるようになります。
筆者の会社も物件担当者が仲介店舗を毎日30店舗以上訪問し、客付けを直接依頼しています。営業マンと密にコミュニケーションをとり、入居がなかなか決まらない物件についてのヒアリングも行い、その結果を原因究明と対策に活かしています。
現場の営業マンから家賃の相場、設備のニーズといったマーケット情報を聞き出し、的確な募集条件を設定できるように努めているのです。
レインズやポータルサイトを活用したアピールも重要
ただし、信頼関係が大事だからといって、仲介店舗の一人の営業マンと懇意になる状況は相応しくありません。
仲介店舗は店舗全体の売上目標もありますが、営業マン個人もノルマを抱えています。そのため、優良物件の情報は営業マン個人が抱え込み、その営業マンのみが使える呼び物や決め物のカードにすることが考えられます。
したがって一人の営業マンとの信頼関係を築くのではなく、店舗全体の売上責任を負っている店長との交流も深めておくなど、コミュニケーションの取り方は工夫しなければなりません。
人間関係づくりだけでなく、ネット検索時代に対応するため、レインズやポータルサイト(SUUMO、ホームズなど)によるアピールも必要です。
レインズは不動産業者のみが閲覧できるデータベースサイトで、売り物件や賃貸物件が登録されています。当社はレインズにすべての物件情報を掲載するとともに、空室情報を日々更新することで、自社の管理物件が上位表示されて目につきやすいよう工夫しています。
さらに自社ホームページにも空室情報を掲載し、入居申込書、保証会社審査申込書、賃貸借契約書などをPDFでダウンロードできるようにしています。これによって仲介会社の営業マンの手数を減らし、入居希望者を紹介しやすい環境を整えています。
このようにあらゆる手段を使って間口を広げ、仲介会社から入居希望者を紹介してもらう機会を増やすことが重要です。