時間術でパフォーマンスは向上しない
たとえば、ビールの販売量と気温の関係を調べると、たいていは「r=0.78」ぐらいの大きな数値が出ます。暑い日に冷たいビールを飲みたくなるのは当たり前ですが、それだけに効果量も高くなるわけです。
その点で、0.25という数値は微妙なラインで、「時間術でパフォーマンスが上がることはあるが、効果を実感できない場面が非常に多い」レベルだと考えられます。
ここで言う仕事のパフォーマンスは、上司による業績評価、仕事へのモチベーション、作業へのコミットメントなどで測定しており、これらの指標に対して、時間術ははっきりした意味を持たないことになります。
さらにチームは、こんな結果も示しています。
【分析結果】
- 勉強のパフォーマンスに使うと時間術の効果はさらに低くなり、学校のテストの点数や成績アップは期待できない
- 時間術がもっとも効果を発揮するのは「人生の満足度」で、仕事のパフォーマンスより72%も影響度が大きい
時間術というと、大半の人は日々のタスクのパフォーマンスアップに使うでしょうが、実際にはさほどの効果を得られず、メンタル改善のメリットのほうが大きいわけです。
時間の使い方を考える時間こそがムダ?
いったん話をまとめましょう。既存の時間術の問題点は次のようなものでした。
- 万人に効果があるような時間術は存在しない
- 時間を効率よく使おうとするほど生産性は下がる
- 時間術の大半はそもそも時間の使い方とは関係がない
こうして見ると、もはやタイムマネジメントなど絶望的にも思えてきます。実証研究では時間術の効果の低さが示され、さらに効率の追求もよくないと言われたら、どうしていいのかわかりません。時間の使い方など、もはや考えるだけ無意味なのでしょうか?
鈴木 祐
科学ジャーナリスト