(※写真はイメージです/PIXTA)

人生100年時代。NPO法人「老いの工学研究所」理事長の川口雅裕氏は、書籍『年寄りは集まって住め』のなかで、親子の対話と「有終写真」について解説しています。

「後はヨロシク」…親子を対話させる「有終写真」とは

親子の対話事例として、大阪のフォトスタジオ「soramark」の代表でフォトグラファーの相葉幸子さんの活動を紹介したいと思います。

 

彼女は、関西でのマタニティーフォト撮影の草分け的存在です。

 

「家族の物語」をテーマに、妊娠中の写真や、誕生した赤ちゃんとの写真、子どもの成長とともに家族写真を定期的に撮影し、その時々のメッセージを入れた写真を残し続けていくサービスを提供しています。

 

五年ほど前からは、高齢者を対象とした「有終写真」を始めました。

 

有終写真には、人生の「有終の美」へ向かっていく人の姿を、写真と言葉で残していくという意味が込められています。

 

相葉さんは撮影する相手をリラックスさせ、人となりが存分に引き出せるよう、様々な質問を投げ掛け、傾聴しながら撮影していくスタイルをとります。

 

撮影が進むほどに相手の心が開いていき、撮影後には気持ちがすっきりと前向きになる方が多いそうです。その様子を傍らで見ている子どもたちは、親がする話にいつも驚いていると言います。

 

子どもとしては、親のことを十分に知っているつもりだったのに、「そんなことを考えていたのか」「そんなことがあったのか」という意外な話が飛び出すからです。

 

80歳代の男性を撮影したときの話です。1ヵ月前に奥さんを亡くしたところであったため、自然と話はご夫婦の関係に及びました。

 

「どんな奥様だったのですか?」と相葉さんが尋ねると、「そりゃあ厳しかった」とひとこと。それから、妻がいかに厳しかったかというエピソードを次々に語ったのだそうです。同席していた息子夫婦は初耳のエピソードばかりで、母親には父親に対してそんなに厳しい側面があったのかと驚いたそうです。

 

一方、それを聞いた孫は「おじいちゃんは優しいけど、おばあちゃんは怖かった」と発言し、その場は大爆笑。このひとときで、男性の心は幾分か軽くなったのではないかと想像できます。

 

最後に、写真に入れる「大切な人へのメッセージを書いてください」とペンを渡すと、「後はヨロシク」と書いたそうです。誰もが妻への思いを書くだろうとしみじみしていた中で書かれた、あっさりとした息子夫婦へのメッセージに家族も相葉さんも泣き笑い。

 

息子夫婦の泣き笑いはきっと、親の人生や今の心境に深く触れることができた感激からだったのだろうと想像します。

次ページ「有終写真」という機会が持つパワーのワケ

本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『年寄りは集まって住め』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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