ロシアとNATO…その緩衝地帯だったウクライナ
1999年、ポーランドやチェコ、ハンガリーが新たにNATOに加わった。2004年にはルーマニア、ブルガリア、バルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、スロバキア、スロベニアの7ヵ国がNATOに加盟している。アメリカの主導によってNATOは東方拡大を続け、ロシアをずっと刺激し続けてきた。
このうえウクライナまでNATOに加わることになれば、ロシア陣営でもNATO陣営でもない軍事的な緩衝地帯(バッファー)を失い、ロシアは喉元に匕首を突きつけられることになる。
西側の同盟国になるか。ロシアの同盟国になるか。中立の道を選ぶか。独立国であるウクライナには、決定権があるのは当然だ。
だがロシアとNATOという巨大国家に挟まれた弱小国であるウクライナは、バッファーにしかなりえない。この地政学的制約を、ウクライナは宿命として受け入れるしかないのだ──リアリストであるミアシャイマー教授はこう考える。私も同じ認識だ。
感情に流されることなく、リアリズムに基づいてここ20年余りの歴史を振り返ってみることが重要だ。ロシアがただ一方的に、ウクライナに軍事侵攻を仕掛けたわけではない。ロシアにも言い分はある。
NATOの東方拡大によって、アメリカがロシアを刺激し続けたことは紛れもない事実だ。どんな戦争にせよ、どんな対立にせよ、国家間の対立は一方のみが100%悪いわけではない。
戦争を引き起こした原因は、アメリカとNATOにあるというミアシャイマー教授の指摘に真摯に耳を傾けるべきと思う。
なお、22年2月15日に収録されたミアシャイマー教授のインタビューは、ユーチューブで動画を視聴できる。日本語字幕つきの20分程度の動画が公開されているので、検索して視聴してみてほしい。
佐藤 優
作家・元外務省主任分析官・同志社大学神学部客員教授
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