タイ経済界の大物、次期首相なるか。振り返る激動の30年
歴代政権の副首相(経済担当)であったソムキット・チャトゥシーピタック氏が再び脚光を浴び、次期政権の舵取りをしようとしている。
タイにおけるこの著名な経済学者は最近、来年の5月7日に予定されている次期総選挙に向けて、新党「未来創造党(サーン・アナコット・タイ)」党の首相候補になる用意がある」と表明した。
69歳のソムキット氏は現在、「タイの未来を築く」という意味を込めた新政党の議長を務めている。ソムキット氏の側近で党首のウタマ・サヴァナヤナ氏と、事務局長のソンティラット・ソンティジャワン氏の技術官僚二人によって設立された。
穏健派という選択肢
ソムキット氏は、タイの政治が二極化し、対立が続いている今こそ、国のリーダーとして自身が立候補する適切なタイミングだと判断したようだ。
タクシン・チナワット元首相を支持する陣営と対立する陣営が票を争う中、ソムキット氏は自身の政党を、穏健派とされる有権者の選択肢として提示している。
「政治状況は実に雑然としている。お金が大きな役割を果たしている」とソムキット氏は9月8日、バンコクで開かれた党のイベントで話した。また、選挙を控えた政治情勢を競馬に例えて、「各政党が選挙に備えて政治家を買い漁っている」と述べた。
「厩舎や馬主が買う競走馬がある。厩舎は、馬を養うためにお金を工面しなければならない。こうしたことが昔から存在していたのは事実だが、今までこれほどまでに目に余ることはなかった」
ソムキット氏は、サーン・アナコット・タイ党に参加した目的は首相になることではなく、「タイを正しい方向に導くための変化を促す」ことに協力するためだと付け加えた。また、党の仲間には、下院の議席よりも国民の信頼を得ることに集中するように伝えているという。
20年にわたるこれまでの政治活動
ソムキット氏は、これまで20年以上にわたりさまざまな内閣ポストに就いており、タイの政界で知らない人はいない。
1998年にはタクシン元首相が率いるタイラックタイ党を設立し、同党における多くの大衆迎合的な政策のブレーンとして知られるようになった。2001年から2006年にかけてのタクシン政権では、財務大臣と経済担当副首相を務めた。しかし、2007年に裁判所の命令で党が解散されると、彼と他のタイラックタイ幹部は5年間政界から追放された。
2014年5月の軍事クーデター後、プラユット・チャンオチャ将軍率いる政権がソムキッド氏を経済諮問委員に任命。2015年8月には経済担当の副首相に任命され、2020年7月まで在任する。また、ウタマ氏、ソンティラット氏などの技術官僚をプラユット政権に引き入れた。
ソムキット氏の技術官僚たちは、親軍事派のパラン・プラチャート党を設立し、2019年の総選挙後、プラユット氏を首相とする政権を樹立することに成功した。しかし、憧れの閣僚ポストを狙う対立派閥たちに圧力をかけられ、2020年にソムキット氏と彼のチームは連立与党から脱落させられてしまった。