日本が誇る「技術力」は有事にも大きな意味をもつ
やはり大事なのは“技術”ということになるのかもしれません。戦争をするためではなくて、自分の国を守るためにも技術が必要なのです。ヨーロッパやアジアとの連携にも、日本の技術力は大きな力になることは間違いありません。
ウクライナ危機では官民を問わず大きな支援が集まりました。企業間の深いつながりが”いざ有事”にも生きるはずです。少なくともイギリスやフランスは、日本に協力してもらえるよう、努力しないとならないでしょう。
例えば、新しい次期主力戦闘機の導入計画「F―X」では日本企業が開発主体ですが、そのエンジンをアメリカを通じてヨーロッパに売り込めばよいのです。その技術が日本にはある訳です。
日本のエンジンがNATOなどのヨーロッパ諸国、あるいはアジアの国々に入っていけば、いざという時にも、その関係はものを言います。日本の協力がなければ、彼らはいざという時エンジンが入ってこなくなる訳ですから。
もちろん多岐にわたる自衛隊の活動が、多国間との連携を深くしていることは言うまでもありません。世界は、洗練され統制の取れた自衛隊に一目置いています。こうした“人的交流”は、やはり日本を守る大きな力になるのです。
意識するべき「総合安全保障」という新概念
最後にもう一つだけ「総合安全保障」という言葉を覚えておいてほしいと思います。防衛や外交だけでなく、経済安全保障、エネルギー安全保障、食料安全保障など、トータルで考えるのが総合安全保障です。
例えば、今、小麦がどんどん値上がりし、中東やアフリカのほうでは大変な状況になっています。需給バランスが崩れたからですが、そういう食料の安全保障も考える必要があります。
コロナ禍では、マスク不足やワクチン不足にどう対応するかという医療の安全保障もクローズアップされました。今後は技術の安全保障にも深い施策が必要になってきそうです。やはり日本は資源のない国ですから。
これまで日本はちょっと“お人よし”すぎたのかもしれません。サイバーセキュリティも、当時は日本が一番だったのに、今は地位が低くなりました。半導体もそうです。白物家電などは、もはや見る影もありません。一番いいものを、みんなに教えてしまうからです。
各国と連携しながら、その中心となり、お互いの力を平和利用に使っていく。大きなビジョンが必要かもしれません。防衛や外交の枠にとらわれない、総合安全保障戦略。それを考えるには、より大局的な観点から物事を捉えなければならないでしょう。そのためにも、まずは現実を知ることが大切だと思うのです。
佐藤まさひさ
参議院自民党国会対策委員長代行
自民党国防議員連盟 事務局長