(※写真はイメージです/PIXTA)

世界地図をのぞくと日本はロシア・中国・北朝鮮に囲まれており、現在の世界情勢を照らし合わせると、地政学上大きく危険をはらんでいる国の一つといえます。2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻による戦場の痛ましい現状の報道を目にして、罪のない人々が苦しむ姿に心痛めるとともに、自国の安全への不安を募らせれている人も多いのではないでしょうか。本連載では「2027年、日本がウクライナになる(他国に侵攻される)」と予測する、元自衛官で「戦場を知る政治家」である佐藤まさひさ氏の著書から一部一抜粋して、日本防衛の落とし穴についての知識を分かりやすく解説します。

ロシアの混乱と苦戦は、SNSにより白日の下に晒される

情報戦を含めた「新しい戦争のカタチ」については第五章でもお話しします。いずれにしても、ロシアは現段階では、その「新たな戦い方」の導入に失敗しました。なぜ、電子戦部隊を同行させなかったのか? あるいは、同行させたのに機能しなかったのか? なぜ、対空火器を完全に叩かなかったのか? なぜ、戦車を多用したのか? 本当に「なぜ?」ばかりなのです。

 

国の存亡をかけて戦争をしかけているはずですから、本来は周到なうえにも周到な準備を行い、事に当たるのが軍事です。電波を使えなくすれば、相手のドローンもSNSも封じられる。そんなことは戦争の素人でもわかります。

 

道路以外の場所でも走行できるのが戦車の強みですが、反対に、狭い市街や、ぬかるんだ泥ねい地には不向きです。それなのにわざわざ重くて高価な戦車を多用し、小さくて安価なドローンにひっくり返されてしまう。滑稽なほどおそまつです。

 

ニュースなどでは、ウクライナの地図を映し「ロシアが制圧した地域」を赤く塗ったりしています。しかし実際は、赤く塗られた地域の村は、単に「ロシア軍が通過した地域」にすぎなかったりもします。村をとりあえず攻撃しただけで通過していく。つまり、ロシア兵は「戦ったふり」をしているだけ。戦意を喪失している訳です。

 

こうした、戦い方の杜撰ずさんさや稚拙さを隠せない時代になってしまいました。もはや、マスコミが戦争を報じる時代ではありません。現場のTwitter情報のほうが早いし、リアルだからです。ウクライナ国民全員が撮影者であり、発信者となったのです。

 

今回のロシアとウクライナの戦いを、今、最も真剣に見ているのは中国でしょう。ロシアはなぜ失敗したのか? ウクライナはなぜ善戦できているのか? どのように情報を使えばいいのか? 世界を敵に回さないためにはどうするか? 

 

台湾統一が視野にある中国にとって、今回の戦争はまさに生きた教訓。スムーズに台湾を獲る方法を思案しながら、虎視眈々と「その時」をうかがっています。

 

佐藤まさひさ
参議院自民党国会対策委員長代行
自民党国防議員連盟 事務局長

※本連載は、佐藤まさひさ氏の著書『知らないと後悔する 日本が侵攻される日』(幻冬舎)から一部を抜粋し、再編集したものです。

知らないと後悔する 日本が侵攻される日

知らないと後悔する 日本が侵攻される日

佐藤正久(現・佐藤まさひさ)

幻冬舎

2027年、日本がウクライナになる――。決して脅しではない。習近平国家主席が4期目を決めるこの年に、世界は大きく動くことになるだろう。ロシア、中国、北朝鮮に囲まれた我が国の危険性は、日増しに高まるばかりである。ロシ…

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