ロシアの混乱と苦戦は、SNSにより白日の下に晒される
情報戦を含めた「新しい戦争のカタチ」については第五章でもお話しします。いずれにしても、ロシアは現段階では、その「新たな戦い方」の導入に失敗しました。なぜ、電子戦部隊を同行させなかったのか? あるいは、同行させたのに機能しなかったのか? なぜ、対空火器を完全に叩かなかったのか? なぜ、戦車を多用したのか? 本当に「なぜ?」ばかりなのです。
国の存亡をかけて戦争をしかけているはずですから、本来は周到なうえにも周到な準備を行い、事に当たるのが軍事です。電波を使えなくすれば、相手のドローンもSNSも封じられる。そんなことは戦争の素人でもわかります。
道路以外の場所でも走行できるのが戦車の強みですが、反対に、狭い市街や、ぬかるんだ泥ねい地には不向きです。それなのにわざわざ重くて高価な戦車を多用し、小さくて安価なドローンにひっくり返されてしまう。滑稽なほどおそまつです。
ニュースなどでは、ウクライナの地図を映し「ロシアが制圧した地域」を赤く塗ったりしています。しかし実際は、赤く塗られた地域の村は、単に「ロシア軍が通過した地域」にすぎなかったりもします。村をとりあえず攻撃しただけで通過していく。つまり、ロシア兵は「戦ったふり」をしているだけ。戦意を喪失している訳です。
こうした、戦い方の杜撰さや稚拙さを隠せない時代になってしまいました。もはや、マスコミが戦争を報じる時代ではありません。現場のTwitter情報のほうが早いし、リアルだからです。ウクライナ国民全員が撮影者であり、発信者となったのです。
今回のロシアとウクライナの戦いを、今、最も真剣に見ているのは中国でしょう。ロシアはなぜ失敗したのか? ウクライナはなぜ善戦できているのか? どのように情報を使えばいいのか? 世界を敵に回さないためにはどうするか?
台湾統一が視野にある中国にとって、今回の戦争はまさに生きた教訓。スムーズに台湾を獲る方法を思案しながら、虎視眈々と「その時」をうかがっています。
佐藤まさひさ
参議院自民党国会対策委員長代行
自民党国防議員連盟 事務局長