(画像はイメージです/PIXTA)

ある女性のもとに、父親が逝去したとの連絡が入りました。女性の両親は離婚しており、それ以降、父親とは音信不通状態でした。もし可能なら、遺産だけでなく、もらえなかった養育費も含めて請求したいのですが、可能でしょうか。高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が解説します。

両親の離婚後、父とは音信不通・戸籍は母方に…

世の中、離婚する人が増えています。そのため、ある日突然、音信不通だった片親が亡くなったとの知らせを受け、相続問題に直面するケースも多いのです。

 

筆者のところにもよく問い合わせがあるのが「親が離婚しているけれども、亡くなったほうの親と一緒に生活していなかった場合、あるいは亡くなったほうの親と戸籍が別になっている場合、そもそも相続権があるのだろうか?」という疑問です。

 

本件では、桜さんは、母親である花子さんの戸籍に入っており、花子さんと一緒に生活をしています。

 

しかし、桜さんが父親の和夫さんの戸籍から抜けたとしても、和夫さんと一緒に生活をしていなかったとしても、和夫さんと桜さんが親子であることに変わりはありません。

 

したがって、桜さんには、和夫さんの遺産について相続権があります。

 

よって、「桜さんは、花子さんと和夫さんの離婚の際に、母親である花子さんの戸籍に入ったことから、相続権はないので、請求はできない」とする選択肢①は誤りです。

 

他方、「桜さんは、花子さんと和夫さんの離婚の際に、母親である花子さんの戸籍に入っていても相続権があるので、遺産を請求できる」とする選択肢②が正解となります。

遺産ともらえなかった養育費を、一緒に請求できるか?

次に、離婚でよく問題となるのが「養育費をもらっていない」ケースです。それについて「相続の際に請求できないか?」という相談をよく受けます。

 

しかし、そもそも養育費の額を決めていない場合は、成人してしまうと養育費は請求できません。養育費を決めていた場合でも、調停や裁判で決めた場合は支払期限から10年で時効にかかり消滅してしまいます。調停や裁判でなく交渉で決めた場合には、5年で時効にかかり、消滅してしまいます。

 

したがって、桜さんが離婚当時12歳ということだと、養育費は20歳あるいは大学卒業の22歳までですから、もっとも支払い時期が遅い、22歳までとしても、離婚後20年、即ち、22歳のときから10年経過したことになります。すると、養育費は、時効で消滅してしまっているということとなります。

 

よって、「和夫さんが養育費を決めたのに支払わず、20年が経過していて養育費は時効にかかって消滅していることから、桜さんは養育費を請求できない」という選択肢③も正解となります。

 

しかし、和夫さんが桜さんに養育費を支払っていればその分財産が減るはずでしたが、養育費を支払っていなかったので、その分遺産として残っていると言える可能性があります。

 

したがって、和夫さんの収入や財産形成の状況にもよりますが、養育費を支払ってもらえていなかった分を寄与分だとして請求できる可能性はあると思います。

 

よって、「和夫さんが桜さんの養育費を支払わなかったことにより、その分和夫さんが残した財産が増えている可能性があり、寄与分を請求できる可能性がある」とする選択肢④も正解となります。

 

ただし、このような裁判例はないので、実際に裁判所で寄与分として請求して認められるかどうかはやってみないとわからないところはあります。

 

今回は、選択肢②③④が正解となります。

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

高島 秀行
高島総合法律事務所
代表弁護士

 

 

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