たとえば、ご両親の遺産を相続する場合、相続対策を行うためには、相続税が実際どの程度の金額になるのか、知っておく必要があります。
国税庁の「令和2年(2020年)分相続税の申告事績の概要」によると、同年にあった相続の全件数のうち、相続税が課税された件数の割合は、8.8%です。自分がそこに入る可能性があるのかないのか、確認しておく必要があるということです。
そこで、本記事ではまず、相続税の計算方法について説明します。そのうえで、相続税の計算のシミュレーション、複数の事例や各種特例や控除についても紹介します。
1. 相続税とは?
相続税の計算方法を学ぶ前に、相続税がどのようなものか、何にかかるのか、確認しましょう。
1.1. 相続税とは財産(遺産)を受け継いだ時に課せられる税金
亡くなられた人を、「被相続人」といいます。
被相続人の財産を受け継ぐ人を、「相続人」といいます。
被相続人の配偶者は、必ず相続人となります。婚姻届を提出していない事実婚では法定相続人になりません。
他の相続人には順位がつけられており、第1順位は子、第2順位は親、第3順位は兄弟姉妹となります。
相続税の対象となる財産(相続財産)は、原則として、被相続人が生前に持っていたお金や土地などのすべての財産です。
相続税は、相続人が相続財産を受け継いだ場合に、その受け取った財産にかかります。しかし、相続税が必ずかかるわけではありません。「基礎控除額」といわれる一定額を上回るときに、相続税の課税が問題になります。
1.2. 相続税を申告する期限と申告方法に注意しよう
相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10ヵ月以内に行うことになっています。
申告期限までに申告をしなかった場合や、少ない額で申告をした場合には、相続税のほかに延滞税や加算税がかかる場合があります。
相続税の申告書の提出先は、被相続人の死亡のときにおける住所を所轄する税務署です。相続人の住所地を所轄する税務署ではありません。税務署の所在地は国税庁のウェブサイト(国税庁|税務署の所在地などを知りたい方)から調べることができます。
1.3. 相続税が課税されるもの・非課税になるもの
相続税はすべての財産に課税されるわけではありません。
どの財産に相続税がかかり、どの財産は相続税がかからないのかを見ていきましょう。
1.3.1.「課税対象」は3つの分類に分けられる
相続税法第2条では、「相続又は遺贈により取得した財産の全部に対し、相続税を課する。」とあります。つまり、原則としてすべての財産が相続税の対象になります。
課税対象の相続財産は以下の3つに分類されます。
本来の相続財産 |
被相続人が死亡した時点で所有していた金銭に見積もることができる経済的価値のある財産のすべて (例)現金、預貯金、有価証券、宝石、不動産(土地、家屋、未登記のものを含む)、 貸付金、特許権、著作権、日本国外に所在するこれらの財産、被相続人が管理していた家族名義の預貯金など |
みなし相続財産 |
相続により取得したものとみなす財産 (例)死亡退職金、死亡保険金、被相続人が保険料を負担し被相続人以外の人が契約者となっている生命保険契約 |
生前の贈与財産 |
相続開始前3年以内に贈与により取得した財産(贈与税110万円の枠を活用した財産を含む) 相続時精算課税制度の適用を受けた財産 |
1.3.2.「非課税対象」も例外として法律で定められている
例外として、相続税の対象にならない財産があり、相続税法12条で以下のものが定められています。
- 墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物
- 非課税枠内(500万円×法定相続人の人数)で受けとる死亡保険金
- 非課税枠内(500万円×法定相続人の人数)で受けとる死亡退職金
- 申告期限までに国や地方公共団体に寄付をした相続財産
- 心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利
- 公益を目的とする事業を行う者が取得した財産で、公益を目的とする事業に使われることが確実なもの
- 個人で経営している幼稚園の事業に使われていた財産で一定の要件を満たすもの
2. 読みながら自分でできる!相続税の計算の手順を解説
本項では、相続税の計算を自分でできるようになるために、計算の手順について解説します。相続財産の総額、基礎控除、課税対象額のそれぞれの求め方がわかります。課税対象額がわかれば、おおまかな相続税額を自分で計算できるようになります。
手順①:相続総額の金額を求める
被相続人の財産を把握します。代表的な財産の調べ方と金額の確認方法は、以下の通りです。
財産の種類ごとの相続税評価額の計算方法については、詳しくは「相続税評価額とは?調べ方や計算方法についてわかりやすく解説」で解説しておりますので、参照してください。
財産 | 調べ方・金額の確認方法 |
預貯金、有価証券 |
通帳や取引履歴がわかるものを確認します。なければ金融機関で履歴の確認ができます。 被相続人の亡くなった日の金額が相続財産です。 |
不動産 |
登記事項証明書を法務局で取得します。土地の評価方法は、後ほど詳しくご紹介します。 建物は、固定資産税評価額が相続税評価額です。 |
車、バイク |
車検証により名義を確認します。評価額は、業者の買取価格です。 |
生命保険 |
保険証券を確認します。 |
死亡退職金 |
勤務先からの通知で確認します。 |
その他動産 (貴金属、パソコン他) |
評価額は、業者の買取価格です。 |
その他の権利 (貸付金、ゴルフ会員権他) |
契約書、郵便物等で確認します。 評価額は、契約書の金額になります。 |
生前の贈与財産 |
贈与契約書で確認します。評価は、契約書にある金額です。 |
手順②:マイナス財産等を差し引く
相続財産は、プラスの財産だけではありません。借入金や未払金などのマイナスの相続財産があれば、相続財産の総額から差し引いて支払うことになります。
借入金や未払金は、契約書等で債権者と残高を確認します。車や住宅のローンの場合も同様です。住宅ローンの場合は、団体信用生命保険(団信)に加入していれば、残りのローンが完済されます。
国税や地方税も、まだ納めていなかったものはマイナスの財産に含まれます。
葬儀費用も、マイナスの相続財産となります。葬儀費用には、通夜、葬儀、戒名、お布施、火葬などの費用が含まれます。ただし、香典返し、初七日以降の法要費用はマイナス財産とすることができません。
手順③:基礎控除額を計算する
基礎控除額が相続財産の評価額の総額を超えると相続税がかからなくなります。
2.3.1. 相続税の申告の有無を決める「基礎控除」
基礎控除は、「法定相続人の人数によって決まる一定の金額まで課税されない」という無条件で適用できる控除のことです。
相続財産の総額から基礎控除額を差し引いた金額を課税遺産総額といい、課税遺産総額が0円以下になれば相続税はかかりません。
課税遺産総額=相続財産の総額ー基礎控除額≦0円なら相続税はかからない。
基礎控除で課税遺産総額が0円以下になった場合は、相続税の申告は不要です。基礎控除額は、平成27年1月1日から「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に減額されました。法定相続人については、「2.3.3」で詳しくご紹介します。
2.3.2. 基礎控除額の計算は「法定相続人の数」がポイント
基礎控除額の計算式は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。
法定相続人が1人の場合、基礎控除額は3,600万円となります。
課税遺産総額=相続財産の総額ー基礎控除額≦0円なら相続税はかからないので、相続財産が3,600万円以下の場合は法定相続人の数にかかわらず相続税がかかりません。
法定相続人の数 |
基礎控除額 |
1人(例:配偶者のみ) |
3,600万円 |
2人(例:配偶者と子1人) |
4,200万円 |
3人(例:配偶者と子2人) |
4,800万円 |
4人(例:配偶者と子3人) |
5,400万円 |
法定相続人の数から計算した基礎控除額が、相続財産を超えていれば相続税はかかりません。相続財産の総額と法定相続人の数がわかれば、自分で計算して相続税がかかるかどうか判断できます。
法定相続人が1人増えるだけでも基礎控除額が大きく変わることがわかりました。法定相続人をしっかり把握することが、相続税の計算のポイントとなります。次章では、法定相続人に含まれる人・含まれない人を確認していきます。
2.3.3.【注意】法定相続人に含まれる人・含まれない人
法定相続人とは、民法で定められた被相続人の財産を相続できる人です。法定相続人になれるのは、配偶者と血族のみです。血のつながった家族を血族といい、法定相続人になることができる血族は、第1順位から第3順位まで民法で定められています。
順位 |
法定相続人 |
必ず法定相続人となる |
配偶者(婚姻届を提出していない事実婚や元配偶者を除く) |
第1順位 |
子(元配偶者の子や養子も含む)、孫(代襲相続の場合) |
第2順位 |
父母(被相続人が亡くなる前に父母がすでに亡くなっていて祖父母が存命の場合は、祖父母) |
第3順位 |
兄弟姉妹(代襲相続の場合は、甥や姪) |
代襲相続とは、本来相続人となる子または兄弟姉妹がすでに死亡していた場合等に、その者の子が代わって相続することです。孫もすでに亡くなっている場合は、ひ孫が代襲相続人となります(再代襲)。ただし、兄弟姉妹が相続人である場合は、甥や姪が亡くなっている場合はその子が再代襲することはできません。
法定相続人は、相続順位が最も高い人が該当します。たとえば、子と母がいる場合、第2順位である母は第1順位の子がいる場合には相続人となりません。
手順④:相続税の総額を求める
預貯金のようなプラスの財産だけでなく、借入金などのマイナスの財産も忘れずに確認することで相続財産の総額を確認します。
相続財産の総額から基礎控除額を引くと、課税遺産総額がわかります。
課税遺産総額が計算できたら、法定相続分で按分します。法定相続分とは、被相続人の財産を各相続人で分ける法律上決められた割合です。以下の表の通りです。
法定相続人の状況 |
法定相続分 |
||||
配偶者 |
子 |
父母 |
兄弟姉妹 |
||
子がいる |
配偶者がいる |
1/2 |
1/2 |
||
配偶者がいない |
1 |
||||
子がいない |
配偶者がいる |
2/3 |
1/3 |
||
配偶者がいない |
1 |
||||
子、父母がいない |
配偶者がいる |
3/4 |
1/4 |
||
配偶者がいない |
1 |
||||
配偶者のみ |
1 |
たとえば、法定相続人が配偶者と子2人、相続財産の総額が10,000万円の場合、課税遺産総額を計算してみましょう。
【課税遺産総額を求める】
相続財産の総額ー基礎控除額
=10,000万円ー(3,000万円+(600万円×3人))
=5,200万円
この法定相続分にしたがって課税遺産総額を各人に按分(あんぶん)すると、以下の通りです。
【法定相続分にしたがって按分する】
- 配偶者 5,200万円×1/2=2,600万円
- 子(2人) 5,200万円×1/2÷2人=1,300万円
さらに、按分した金額に税率を掛け、合計すると、相続税の総額を求めることができます。
ただし、相続税の税率は累進税率が採用されており、金額が高くなるごとに、段階的に税率が上がっていきます。そこで、以下の速算表を使います。
法定相続分に応ずる取得金額 |
税率 |
控除額 |
1,000万円以下 |
10% |
- |
3,000万円以下 |
15% |
50万円 |
5,000万円以下 |
20% |
200万円 |
1億円以下 |
30% |
700万円 |
2億円以下 |
40% |
1,700万円 |
3億円以下 |
45% |
2,700万円 |
6億円以下 |
50% |
4,200万円 |
6億円以上 |
55% |
7,200万円 |
出典:国税庁|相続税の税率
この速算表をもとに相続税の総額を計算すると、以下のようになります。
【相続税の総額を求める】
2,600万円×15%-50万円(配偶者)
+1,300万円×15%-50万円(子1)
+1,300万円×15%-50万円(子2)
=630万円
手順⑤:各相続人の相続税を算出する
相続税の総額を実際の相続割合で按分することで各相続人の相続税を算出することができます。
上述の例で、相続財産の総額10,000万円のうち配偶者が8,000万円、2人の子がそれぞれ1,000万円相続する場合、各人の相続税は以下のとおりです。
【配偶者の相続税額】
630万円×8,000万円/10,000万円=504万円
【子の相続税額】
630万円×1,000万円/10,000万円=63万円
以上は、基礎控除のみを考慮に入れて計算したものです。
実際には、各種「控除」の制度があります。詳しくは後ほど紹介します。
4. 土地を相続するときの「相続税評価額」の計算方法
相続財産の評価方法は、先述したとおり、財産の種類・性質によってさまざまです。
詳しくは「相続税評価額とは?調べ方や計算方法についてわかりやすく解説」をご覧いただくとして、本項では、一例として、土地の相続税評価について、「路線価方式」と「倍率方式」の2種類を紹介します。相続財産のなかでも特に土地は大きな金額となるため、土地の評価金額が相続税の計算で重要なものになります。土地の相続税評価額を計算する参考にしてください。
方法①:路線価を用いて計算する「路線価方式」
路線価とは、その道路に面する土地1㎡あたりの千円単位の評価額です。路線価が設定されている地域の土地は路線価に基づいて評価します。この路線価に基づいて土地を評価する方法を「路線価方式」といいます。
路線価による相続税評価額の計算式は、「路線価×補正率×土地面積」です。
路線価が定められた土地がどうかや定められている場合の補正率は、国税庁のホームページ(国税庁|財産評価基準書)にある路線価図で確認できます。
たとえば、一路線に面する宅地で、路線価図から路線価が「1㎡=300C(30万円)」、補正率が「0.9」の500㎡の宅地の場合、土地の価格の計算式は次の通りです。
■路線価図を用いて土地価格を求める計算式
土地の価格
=路線価×補正率×土地面積
=300,000×0.9×500㎡
=135,000,000円
なお、路線価の右隣のアルファベット(A~G)は第三者のために借地権が設定されている場合の借地権割合を示しています(A:90%、B:80%、C:70%、D:60%、E:50、F:40%、G:30%)。
次に、二路線に面している場合の計算式は、次の通りです。
■二路面に面している土地価格を求める計算式
土地の価格
={(正面路線価×補正率)+(側方路線価×補正率)}×土地面積
方法②:固定資産税評価額を用いて計算する「倍率方式」
倍率方式は、路線価が定められていない地域の評価方法です。土地の価格は、その土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算します。
固定資産税評価額は、毎年6月ごろに届く固定資産税の納税通知書や都税事務所や市区町村役場で取得する評価証明書で確認できます。
評価倍率表は、国税庁のホームページで確認できます。評価倍率表には、町又は大字名があり、借地権割合や地目毎の倍率等が記載されています。
たとえば、土地の評価額が10,000,000円、評価倍率が1.1の場合は、以下のような計算式になります。
■倍率方式で土地価格を求める計算式
評価額
=10,000,000×1.1
=11,000,000円
【計算例】更地を相続した場合
何も建っていない「更地」を相続した場合、路線価に従った評価額が算出され、相続税の優遇措置の適用はありません。
したがって、以下のような計算式で相続税を求められます。
(土地の相続税評価額 - 基礎控除額)×税率
たとえば、500㎡の更地、路線価300千円、補正率0.9、基礎控除3,600万円の場合
■更地となった土地価格を求める計算式
更地の評価額
=300,000×0.9×500-3,600万円×30%-700万円
=22,700,000円
更地では、2,270万円の相続税がかかることになります。
更地で相続するとこれだけの税金がかかるため、建物を建てたり、土地を貸し出したりすることで、土地の評価額を下げることができます。
詳しくは「相続税評価額とは?調べ方や計算方法についてわかりやすく解説」をご覧ください。
5. 相続税の計算にも関係する各種控除を紹介
本項では、基礎控除以外で相続税の負担を引き下げることができる控除の制度を紹介します。
5.1. 配偶者控除
被相続人の配偶者について、次の金額のうちどちらか多い金額まで、相続税がかからないという制度です。
- 1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分相当額
この配偶者控除の税額の軽減は、遺産分割などで実際に取得した財産を基に計算されるので、申告期限までに取得財産が決まっていない場合は税額軽減の対象になりません。
たとえば、4億円の相続財産を配偶者と子1人で2億円ずつ相続する場合、1億6,000万円は超えていますが、配偶者の法定相続分相当額(1/2)の範囲内なので配偶者に相続税はかかりません。
5.2. 未成年者控除
相続人が未成年者のときに、相続税の額から一定の金額を差し引く制度です。対象となる未成年者控除を受けられるのは、相続や遺贈で財産を取得したときに次のすべてに当てはまる人です。
- 日本国内に住所がある人
- 18歳未満である人
- 法定相続人
未成年者控除の額は、その未成年者が満18歳になるまでの年数1年につき10万円で計算した額です。1年未満の期間があるときは切り上げて1年として計算します。
たとえば、未成年者の年齢が15歳9ヵ月の場合は9ヵ月を切り捨て15歳で計算します。この場合、18歳までの年数は3年になります。したがって、未成年者控除額は、10万円×3年で30万円となります。
5.3. 障害者控除
相続人が85歳未満の障害者のときは、相続税の額から一定の金額を差し引きます。
障害者控除が受けられるのは、相続や遺贈で財産を取得したときに次のすべてに当てはまる人です。
- 日本国内に住所がある
- 障害者である
- 法定相続人
障害者控除の額は、その障害者が満85歳になるまでの年数1年につき10万円で計算した額です。年数の計算に当たり、1年未満の期間があるときは切り上げて1年として計算します。特別障害者の場合は1年につき20万円で計算します。
ただし、以前の相続においても障害者控除を受けていたときは、控除額が制限されることがあります。
5.4. 相次相続控除
相続税の負担が過重とならないように、今回の相続開始前10年以内の相続の税額のうち一定の相続税額を、財産を取得した人の相続税額から控除しようとする制度です。
相次相続控除が受けられるのは、次のすべてに当てはまる人です。
- 被相続人の相続人
- その相続開始前10年以内に開始した相続により被相続人が財産を取得している
- その相続開始前10年以内に開始した相続により取得した財産について、被相続人に対し相続税が課税された
控除額は、前回の相続において課税された相続税額のうち、1年につき10%で逓減したあとの金額です。
5.5. 贈与税額控除
贈与税額控除は、相続税と贈与税を二重に税金を払うことが無いように相続税から差し引くことができる控除です。
贈与で財産を取得した人が、被相続人から生前に「暦年贈与」や「相続時精算課税制度」によって取得した財産があるときには、その人の相続税の課税価格に贈与を受けた財産の贈与のときの価額を加算します。贈与財産は、相続開始前3年以内に贈与されたものです。3年以内であれば贈与税がかかっていたかどうかに関係なく加算します。
相続税から直接差し引くことができるので、3年以内に贈与があった方は確認することをおすすめします。
5.6. 外国税額控除
日本に住む人が相続で外国の財産を取得したときに、財産所在地国に課せられた税額(外国税額)を日本の相続税額から控除する制度です。
日本と外国との二重課税を緩和するために設けられた制度です。
外国税額控除の要件は、次の通りです。
- 相続または遺贈により財産を取得したこと
- 取得した財産は外国にあること
- 取得した財産について、財産所在地国から相続税に相当する税が課せられたこと
相続税の外国税額控除額は、必ずしも財産所在地国で課せられた税額相当額ではなく、控除限度が設けられています。
円への換算レートは、原則は納付すべき日の為替相場となります。
6. 相続税の「2割加算」の制度に気をつけよう
財産を取得した人が、「被相続人の一親等の血族および配偶者以外の人」である場合には、その人の相続税額に、税額控除前の相続税額の20%が加算されます。
具体的には、以下のような人が「2割加算」の対象となります。
- 被相続人の配偶者、父母、子ではない人(被相続人の兄弟姉妹や、おい、めいとして相続人となった人)
-
被相続人の養子として相続人となった人で、その被相続人の孫でもある人のうち、代襲相続人にはなっていない人
7. 自分で計算せずに相続税を求める方法
これまで相続税の計算方法を見てきましたが、どうしても難しいイメージがあります。計算方法も簡単ではないので、間違いがあるかもしれません。そこで、自分で計算しなくても相続税の額を求められる方法をご紹介します。
7.1. 相続税の専門知識を持つ税理士に依頼する
自分で計算しない方法で最初に思いつくのは、税理士に依頼することです。
税理士に依頼すべきケースとしては、次の通りです。
- 自分で計算した結果に不安がある
- 計算した結果、課税遺産総額がギリギリで0以下
- 計算した結果、課税遺産総額がプラス
税理士に依頼すると税理士報酬がかかりますが、正確な相続税の額がわかりますし、納税申告もスムーズにいきます。
7.2. 国税庁「相続税の申告要否判定コーナー」でシミュレーションする
計算が苦手な方は、国税庁のホームページに「相続税の申告要否判定コーナー」があります。相続財産の金額などを入力することにより、相続税の申告のおおよその要否を判定するものです。さまざまな特例や控除を反映させたシミュレーションを行うことができます。
ただし、平成26年(2014年)12月31日以前の相続開始の場合や、形状がいびつな「不整形地」を相続した場合は判定ができません。また、あくまでもシミュレーションであり、相続税の申告書を作成するのには使えません。
なお、税理士事務所等のHPでも、相続税の簡単な試算ができるエクセルのテンプレート等を公開していることがあり、それらを活用する方法もあります。
まとめ
相続税を計算するために、相続税が課税されるもの3つ(本来の相続財産、みなし相続財産、生前の相続財産)と非課税のもの(墓石、保険金、退職金など)を確認しました。
計算の手順は、相続財産の総額からマイナスの財産と基礎控除額を差し引き、相続税の総額を求め、法定相続人の按分から各相続人の相続税額まで確認しました。
この記事を何度も読み返すことで、各種特例や控除の主なものや計算における注意点を理解し、相続税を自分で計算できるようになります。相続は、ケースバイケースではありますが、自分で相続税を把握することが重要です。
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